相対 ページ28
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瞬間、耳をつんざくような音がして、窓ガラスが割れた。飛び散ったそれは、廊下に散らばったまま。その上を何かが影を落とした______異形の怪物。濁った目と、澄んだ悟の目がかち合う。ゆっくりと、こちらを向いて。
固そうなアーマーに包まれた蟹みたいな見た目だった。まぁ強そうだ。しかし、大した障壁ではない。
「師、いいよな」『はい、どうぞ気が晴れるまで』
Aが言い終わる前に、悟は床を蹴っていた。あまり動きが速くないかと見えたが、腕の先は機敏に動くようで、これが厄介である。さて、とひと刺し____するも、刺さらず。装甲が嘘みたいに硬い。一級はそう柔くはない。
続けて上の柔らかそうなところを叩いてみる。捌くようにナイフを持ち直して、ぐさりと。感触は良好である。呻き声のような、そんなものは聞こえて来ず、かすり傷といったところか。
「強がってんじゃ、ねぇよ!」
次々に飛んでくる脚をかわしつつ、搔っ捌く。減らせば遅くなるかと試みる。…本当に、そのようだ。若干の変化ではあるが、遅くなった。これはやったぞと、口角が上がるのを隠しきれない。
一度、調整にと下がろうとする。そのとき、床を蟹(仮称)の足が強く叩いた。床が、轟音とともに抜ける。…………足場はない。「ッ、やべ」
ふっと、重力に逆らわず落ちていこうとするかと思えば、ゆっくりと宙を舞った。そう、右腕が動かないように掴まれたまま。
『おばかさん、下は見ましょうね』「……たすかった」『貸し1ですね、お忘れなきよう』「うわサイッテー…」
コツを掴めば簡単だった。結局、首根っこを掴んで無下限で滅すのが一番手っ取り早い。汚い呻き声を上げながら灰になる呪霊には目もくれず、Aと悟は、窓ガラスの賠償責任を上層部に投げようと、密かに合意していた。
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月山(プロフ) - むさん» ありがとうございます。私もそこはとても気に入っていたので、そう言っていただけて嬉しい限りです。 (2021年2月3日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - 5ページの最後が天才すぎます。。。もう滅茶苦茶好きです。応援してます…! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
月山(プロフ) - 腐ぉーちゅんさん» ありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳無いです。楽しんでいただければ幸いです。 (2021年1月30日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
腐ぉーちゅん - 初めまして。次が楽しみで仕方ないです(((o(*゚▽゚*)o)))更新お待ちしておりますm(_ _)m (2021年1月26日 20時) (レス) id: 6ffd1602df (このIDを非表示/違反報告)
莎(プロフ) - Noahさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます。ご期待の添えるよう頑張りたいです。 (2021年1月12日 19時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月山 | 作成日時:2021年1月11日 9時