装義 ページ23
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間も無くして、Aは胡堂家に引き取られた。売り払われたのか、ただ引き取られただけなのかはわからない。薬袋から養子に行くのは数十年ぶりだった。A(9)、期待を背負う。
いった先、あちらの家の長男、にいさまは優しい人だった。なんで?無条件の愛は恐ろしいと言うことをAは初めて知った。卑しい身分なんて、卑下するでもなく、そのような肩身の狭さを隠しきれないAに平等に接した。ある八月、彼が差し出した缶のスコールが冷たかったことだけ、それで心が揺れたのだ。真夏のコンクリートの日よけみたいな人だった。笑い方が純朴だった。爽やかすぎて、苦手だったがそう思うのも申し訳なかった。
すぐにいなくなった。たしか、12やそこらのときに。
当然のように時は流れていった。声を忘れて、顔も思い出せなくなって、いつしかその気配さえ脳裏から排除された。思春期特有の希死念慮や、故郷へのセンチメンタルなこころを思い出すたび、彼のことが文字だけよぎったが、思い出せなくてもう忘れることにした。楽だ。
どうにも寂しい人間性だけ抱えて、高専に入った。淡々と作業をこなして、授業を受け、本家に怒られない程度に遊んだ。
いつか騒がれた、麒麟児だと。それも昔のことで、期待に沿えなかった自分が悪いのかなと、表面だけの自己嫌悪に陥った。笑える。___笑うところだ。
結局、一級止まりだった。なんとなく、他人のための命を賭したゴミ清掃員という職に納得できなかったのだと思う。自分のゴミの始末くらい、自分でしろと思う。
適当に卒業できる程度におさめて、なんとなく大学に入って、若者らしい遊びをして、逆張りしてみたくて本家からの依頼__と言うよりは強要___にシカトを決め込んだ。ので、卒業後ガキのお守りをすることになった。
初めて、悟の話を聞いたのは高専に入ってからだった。すでに3・4歳だった。
彼の死をなんとなく引きずっていたAは、あんな寵児の名すら知らなかった。
そこで初めて、彼を失ったことを、随分と自分が重く受け止め、辛かったのだと知った。
『だから、悟になにかを落とし込むか?おかしな話だ。そりゃあ、』
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月山(プロフ) - むさん» ありがとうございます。私もそこはとても気に入っていたので、そう言っていただけて嬉しい限りです。 (2021年2月3日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - 5ページの最後が天才すぎます。。。もう滅茶苦茶好きです。応援してます…! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
月山(プロフ) - 腐ぉーちゅんさん» ありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳無いです。楽しんでいただければ幸いです。 (2021年1月30日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
腐ぉーちゅん - 初めまして。次が楽しみで仕方ないです(((o(*゚▽゚*)o)))更新お待ちしておりますm(_ _)m (2021年1月26日 20時) (レス) id: 6ffd1602df (このIDを非表示/違反報告)
莎(プロフ) - Noahさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます。ご期待の添えるよう頑張りたいです。 (2021年1月12日 19時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月山 | 作成日時:2021年1月11日 9時