到着 ページ20
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車が止まる。
ビルの立ち並ぶ都市部からずっと先、郊外の住宅地がぎゅっと詰められたような、息苦しそうな一軒家の並びへと、流れる風景は変わっていった。
五条家ほどではないが、まぁ一般家庭というには裕福そうな家々が並んでいた。その近郊にある学校なんて、負の感情のかたまりだろう。受験だ学歴だと騒ぎ立てる親どもは恐ろしいことを、そこそこいい家の娘息子が通う私立小に在籍している悟は知っていた。目にしたことがあるのだ。
『はい、着きましたよ』
師は車から降りるなり、補助監督の女性に伝えるべきことを伝え、すたすたと歩いて行った。歩くのが速い。悟はその後を追っていった。
「うっわ、最悪じゃん」
広がる、いやな気配。間違いない______呪霊のものである。しかも、普段悟が見ているような類のものとは、また異なる。
『まぁ、一級4体ですからね』
にっこり笑って、『ちゃっちゃと終わらせて、美味しいもの食べましょう』と冗談めかして言った。死ぬ気も、臆する気もないひとの態度だった。
『希望あります?』「なんにも」『甘いもの食べたいです』「女子かよ」
馬鹿でかいグラウンドを横目に、校舎前にたどり着く。古めかしい音を立てて開いた、私立らしく綺麗な昇降口のドア。その先には、階段があった。ぱっと見、5階建と言ったところか。
『僕は上から見てきます。きみは下から、ね』
「はぁ?それ、本気で言って…」
『じゃ、また』
「ッ、おい!」
瞬きの間に、黒いハットを目深に被った彼は、校舎の闇の中に消えていった。
ため息をつく。クソ教師が、と口をついて出た暴言を咎めるひとはいない。しょうがないと、とりあえず右側から、と振り返った、そのとき。
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月山(プロフ) - むさん» ありがとうございます。私もそこはとても気に入っていたので、そう言っていただけて嬉しい限りです。 (2021年2月3日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - 5ページの最後が天才すぎます。。。もう滅茶苦茶好きです。応援してます…! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
月山(プロフ) - 腐ぉーちゅんさん» ありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳無いです。楽しんでいただければ幸いです。 (2021年1月30日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
腐ぉーちゅん - 初めまして。次が楽しみで仕方ないです(((o(*゚▽゚*)o)))更新お待ちしておりますm(_ _)m (2021年1月26日 20時) (レス) id: 6ffd1602df (このIDを非表示/違反報告)
莎(プロフ) - Noahさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます。ご期待の添えるよう頑張りたいです。 (2021年1月12日 19時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月山 | 作成日時:2021年1月11日 9時