【男主】先生の師【五条悟】

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『あの、悟。お尋ねしたいことが』



「なに？」



『あなたは、五条家の当主になるつもりはありますか？』




「は？」最近矯正されかけていた口調がまた乱れる。

当たり前だ、相伝の術式を、六眼を併せ持って生まれてきた、呪術師になるために生まれてきた存在。今まで、すべて学んだことも身につけたことも、それに繋がる。そう信じてやまない。



なにを当たり前のことを？そう、言いたげな表情で伝わったのか、彼は口を開いた。



『生まれてこのかた、考えたことなんてないでしょう』

「ったりめぇだろ、全部決められてんだから」


『それをね、また問い直してみてください』



まだ10歳の君には難しいかもしれないけれど。



『なにも、決められたレールの上を歩む必要はない、そうでしょう？』

「だったら、師がいる意味ないじゃん」

『ええ、僕はいてもいなくてもいい』


しかしながら。


『呪術師は、世の果てしない地獄の末端です。誰のために命を投げ出して、人一倍の努力をして、過去を顧みず、そうせかせかと働くのでしょう。僕はそれがね、わからなかったから一級止まりなんですよ。自分を捨てきれないし、顔を見たこともない人のために命を捧げる気になんて毛頭なれない』



ましてや、人間が作りだした負の感情でできたものを、傷を負いながら祓う理由ってなんなんでしょうね。



Aは、遠くを見ていた。ずっと、ずっと遠くを。窓のない部屋、障子を隔てた先から聞こえる小鳥のさえずりや、子供の笑い声に目を細めて、まるでなにかを懐かしむように。

口にするこの世の残酷を、誰もが問うことをやめた矛盾や真実を、また何かで覆い隠すような。






『はは、ごめんなさい。また小難しい話ばかりで』









ほんとうに。




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