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破綻 ページ11

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『おっと』

躱す。さらりと風もない早朝に風を巻き起こすか、または凪に溶けるようなその動き。大振りなようで、緻密な動き。どちらかは判別がつかない。つけば、困らないしとっくの昔に勝ててる。

「こんの、っ」

あてもなく殴ることに意味がないのはわかっている。だから、毎日よく観察した。見ろ、と彼が言ってしまう前に。

ひらり、彼は避ける。無駄のない動き。彼は何が見えるわけでもない。位は違えど、同じ血をひく悟とA。彼は六眼を持たず、相伝でない、しかも攻撃特化というわけでもない術式を持つただのひと。

なのに?

彼の余裕そうな顔に右ストレートを決めるだけ。それが、きっと遠い道であることは間違いなかった。10歳、五条悟。広い世界を知る。これだけの実力があるのだ、きっと俺が生まれて来なければ、師が当主だったに違いない。

彼を師と仰ぐようになって、呼び方が変わって、3ヶ月を経た。春が来たらしい。



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呼吸を整える。


「師って、特級?」『いいえ?一級止まりですよ』「は」


心底意外だと言わんばかりの悟の表情に、彼は笑って、『悟は、僕ばかり見ているから強く感じるだけです。術式との組み合わせでどうにでもなりますからね、僕はそれができない。ですから、体術を真面目にしただけです』と言い放つ。


『そういう意味では、無下限は汎用性抜群ですからね。持ち前の頭が生かされますねぇ』

「まるっきりタイプ、別なのになんで師が俺に教えてんの?」

ばつが悪そうな顔。わかりやすく、なにかあってそれは言えないという顔だった。

「ほどほどにしとけよ」

『すみませんね、僕も大概不良でして』

お恥ずかしい限りだ、と彼は頭を掻いた。伏せられたひとみはどこも見ていない。分家のいざこざはよく耳にする。五条家の分家、胡堂と浅河(あざかわ)。仲は、驚くほど良くない。蹴落としあって、五条家への貢献を羅列して比較し合う。そのために生まれては有用性を確かめ、確かであれば上の家へ売り飛ばされる分家の分家の子供。ここ三百年、やっていることは変わらない。資本主義と同じように、競争が強くあるのだ、と当の五条は宣うのだが。



「…俺が特級になったとき、ハンカチ咥えて泣いてりゃいい」


そう、強がる。そのような志を潰える前に焚きあげておく。未だ、諦めるには随分と早いのだ。

ぱっと、あげた彼の顔がぎこちなく、笑みが塗られるように、本性が見え隠れするその表情がどうしても忘れられなかった。


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月山(プロフ) - むさん» ありがとうございます。私もそこはとても気に入っていたので、そう言っていただけて嬉しい限りです。 (2021年2月3日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 5ページの最後が天才すぎます。。。もう滅茶苦茶好きです。応援してます…! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
月山(プロフ) - 腐ぉーちゅんさん» ありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳無いです。楽しんでいただければ幸いです。 (2021年1月30日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
腐ぉーちゅん - 初めまして。次が楽しみで仕方ないです(((o(*゚▽゚*)o)))更新お待ちしておりますm(_ _)m (2021年1月26日 20時) (レス) id: 6ffd1602df (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Noahさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます。ご期待の添えるよう頑張りたいです。 (2021年1月12日 19時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月山 | 作成日時:2021年1月11日 9時

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