好敵手と剣 ページ10
「つまらない...」
剣の稽古を終え、支度を整えるアルスラーンは
げんなりしていた
『お疲れ様でございました、殿下』
「Aが、話をしてくれるというのに
また剣の稽古とは...」
あの後
ヴァフリーズの指導が途中であったため、
アルスラーンは稽古に戻り
待っているようにと言われた私は、
その場で稽古を見守ることにした
殿下は、そのまま切り上げたかったようだが
相手がヴァフリーズでは、そうはいかない
稽古に割り込んで中断させた張本人は、
愚痴るアルスラーンに、苦笑いするしかなかった
「なぜ大将軍ヴァフリーズは、
父上の遠征に同行しなかったのだ?
おかげで毎日剣の稽古に付き合わされて、散々だ」
殿下は、まだお若い、
街の子供であれば遊びたい盛りだろう
東方国家の脅威や剣の基本の重要さを説くヴァフリーズの言葉は
殿下にはお説教のように聞こえているのだろうな
『殿下は、剣はあまりお好きではないようですね』
「あ...いや、そうだな、そういうわけではないのだが」
『ふむ、剣の稽古が楽しくないのは、
競う相手がいないからやもしれませんな』
「競う?」
『ええ、良き人に師事することで得る剣もあれば、
実力の近い者同士、切磋琢磨する、
そのような環境で、磨かれる剣もあります
互いに競い、高めあえる者がいれば、
剣の稽古も、また楽しいものになりましょう』
私と友人のように
「おぬしには、おるのか?
...その、お互いを高めあえる者が」
『ええ、おります。
とはいえ、いつも私が負けてばかりですが...』
『しかし彼との日々がなければ、今の私の剣はありません、
殿下も、そのような者を見つけたならば、大切になさいませ』
「私にもできるであろうか…」
『もちろんですとも!!』
自信なさげな、アルスラーンの様子に
少しばかり、声が大きくなってしまった
それどころか、私は、殿下の手を取っていた
眼前には、驚いたアルスラーンの顔がある
不躾に、近づき過ぎた…!
サッと、離れようとしたAの手を
アルスラーンは握り返す
「ありがとう、A
それは、とても楽しみだ」
アルスラーンはそう言って
嬉しそうに笑った
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作者名:しゅんすけ | 作成日時:2018年6月3日 15時