自由な鳥は空と生きる (ページ3)

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戦場にて-2 ページ3

愛馬に駆け寄ると

ブルルと顔を寄せるものだから
長いまつげがくすぐったい

敵を倒すためとはいえ、
馬上から降りてしまったので
戦が始まってすぐ別れてしまっていた

何処に居るともわからない私を探して
あの広い戦場を駆けたのだ

ずいぶんと心細い思いをさせてしまっただろう

「A」

けがなどないかな？
と愛馬の様子を見ていた青年は、
名前を呼ばれて、手を止める

「これをかぶっておけ」

『え』

いきなり、持っていた兜を投げてくるものだから、
慌ててをれをキャッチする

なぜ？といった様子で視線を向けると

シャプールは私の姿を眺めて、
また、ため息をついた

「戦は終わったが、
そのような軽装でいるのは些か不用心であろう」

たしなめるように言うシャプールに、
困った顔をしてしまう

私はどうも重い甲冑は苦手なので
いつもほかの兵よりも軽く薄い装備であった

頭は自分で守ればよいのだ、と兜もかぶらない
そのため戦場にあっても、
その風貌は騎士や兵士のそれではなく
市民や旅人のようなものだった

大丈夫だというのに

この友人は真面目で
融通が利かないところがあるからなあ

気遣いはありがたいが、苦手なものは苦手なのだ

すこしふざけてやろうと
兜をわざと少し遠くへ投げ返す

『貴方の汗まみれの兜はやめておくよ！』

「な...！」

あと少しのところで兜を掴み損ねて
後ろへ転がるシャプール

「くっ、A...
ふざけているのではないぞ！俺は真剣に...！」

『ははは、すまない！すこし冗談を言ったまでだ、
お気持ちだけいただこう。

　毎度言っているが、私は好んでこの格好なのだ
あまり気にせんでくれ！』

「むう...」

シャプールは、まだ納得いかない様子だが、
昔からの長い付き合いだ

この青年が、言ってきくような性格でないのも
よくわかっていた

『...さて、戻ろう！』

ひらり、

自分の愛馬にまたがり、

青年は颯爽と駆けだしていく

小柄な体に貧弱な装備

腰に揺れる双剣だけが
日の光を受けて金色に輝いていた