王妃か母か ページ11
中庭を出たところで、
こちらへ向かってくる者があった
絶世のと言ってよいだろう、美しい女性だ
王宮にはこのような美しい方もいるのだな...
女性に目を奪われて呆けるAをよそに
アルスラーンはその女性に声をかける
「母上!」
女性が立ち止まる
「...剣の稽古ですか、アルスラーン」
「はい!
父上のような、立派な王になるために
励んではいるのですが、なかなか上達いたしません」
女性は、答えるアルスラーンの顔を見ようとはしない
「今も大将軍にいいようにあしらわれまして、
さすがは、大将軍ヴァフリーズ!私なぞ...」
「そう」
興味がない、そういった様子に見えた
アルスラーンの言い終わらぬうちに、
女性はさっさと行ってしまう
”母”ということは、あの美し女性が、
王妃タハミーネ様…
噂の通り、誰もが見惚れる美女であった
それにしても
息子に、一瞥もくれぬのか、
一人息子に、ずいぶんと冷たいのだな
王族とは、そういうものなのだろうか?
私に母はなかったが、
父は稽古がおわれば、よく頭を撫でて褒めてくれたものだ
最初は、それが嬉しくて、稽古を頼んでいたっけ
「...立派な王とは、なんだろうな」
俯きがちに言うアルスラーンに、胸が痛んだ
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作者名:しゅんすけ | 作成日時:2018年6月3日 15時