死柄木弔の妹 season6【ヒロアカ】 (ページ17)

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轟side

Aは俺に何も言ってこなかった。

同時に、自分勝手な思いを吐き出していたことに俺自身ハッとする。

彼女の様子をちらりと見れば、何かを真剣に考えているような様子だった。

「っあ、悪い…」

「焦凍は何も悪くない」

彼女はそれだけを言って、俺の方をじっと見つめる。

彼女の透き通るような赤い瞳に吸い込まれそうになりながら、俺も彼女の顔を見つめ返した。

「…どうして、そこまで私のことを尊重してくれるの？」

少し影の入った笑顔でそう言うAに俺は思わず微笑んだ。

きっと彼女は今、自分が幸せになっていいのかわからなくなっているのだから。

「前にも言ったと思うけど、好きだから。それだけで十分な理由だろ」

「幸せになっていいって言われたんだ」

Aは朗らかに微笑んでいた。

まるで、何かから開放されたような笑みだった。

「敵の妹でも、幸せになっていいと言われた。救えなかった人がいても、ヒーローになれるって言って貰えた。救えなかった人がいたのに、ありがとうってお礼を言って貰えた。」

救えなかった人、きっとそれはサー・ナイトアイのことなのだろう。

なんとなく想像ができたその言葉に、俺は何も言わなかった。

何も言えなかった。その苦しみを、俺はわかってやれないと思ったから。

「それでも、私はまだ勇気が出ない。幸せになれる勇気がないんだ」

「それって、」

それはまるで、俺のことが好きなのに、その勇気がないと言われているようで、思わず俺は彼女の方を向いた。

「私は、焦凍が色々なものを抱えていて、すごく苦しい思いをしたことを知ってる。焦凍が抱えるものを私も背負いたいと思ったし、焦凍の隣で、私も輝くヒーローでいたいと思ってる」

それはまるでAなりの告白のようだった。

そうでないとしたら、よっぽど彼女は策士だろうと思うほどに。

「きっとこの感情は、焦凍にしか抱かない特別な感情だよ」

「っ！」

ずっと言って欲しかった、彼女からの言葉は、それだけで終わらなかった。

「でもまだ、もう少し待って欲しい。わがままで申し訳ないんだけど…手の届く範囲に救いたい人がいるんだ。」

彼女の優しい笑みに、俺は頷くしかなかった。

救える人を救って、彼女が何のしがらみもなく、願わくば俺の隣に。