死柄木弔の妹 season6【ヒロアカ】 (ページ15)

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「A、今暇か？」

「うん、どうかした？」

自分の部屋ではなく、共有スペースで私は問題集を広げて勉強していた。

もちろん自分の部屋でやってもいいんだけど、自分の部屋でやると時間を忘れちゃう節があるからね、ここなら誰かしら今みたいに声を掛けてくれるはず。

「いや、普通にAと話したくて」

“今はお互い違う仕事任されてるからなかなか話せねぇ”

そう続けた焦凍に思わず笑みがこぼれた。

私にそんなことを言ってくれるなんて嬉しいから、なんて言葉では理由にはならないだろうか。

「私も、焦凍と話したかった」

私が彼にそう返すと、焦凍は少しだけ顔を紅くしたのちに“そうか”と小さく、でも嬉しそうにつぶやいた。

彼が私に告白してから結構な時間がたっているけど、私はあれを忘れることなんてできなくて。

それが自分史上初めての告白だったからか、それとも相手が焦凍だったからなのか、その理由は定かではないが。

私と焦凍が集まれば話す内容はヒーローのことだった。

私が特別オールマイトやほかのヒーローに憧れや好く気持ちがないから、つまらなくないのかと以前聞いたら、“Aは今見つけてる最中なんだろ”返してくれた。

もし憧れのヒーローができたとき、俺に一番に教えてほしいんだ、とも。

そのときのまっすぐな目は忘れらえないし、そんなヒーローができたときには一番に焦凍に教えようと思っている。

「俺は、俺のやり方でヒーローになるんだ」

「うん」

私が小さく頷くと、安心したように焦凍がほほ笑む。

彼にとって足かせとなっていた父親への思いは、少しずつ変わってきているのかもしれない。

「一緒に、思い描く最高のヒーローになろう」

「あぁ」

彼の目には強い意志が浮かんでいた。

歪だった彼らの関係は変わろうとしていて、歪んだ感情は元に戻ろうとしている。

だから、轟家にはこれから少しづつ家族の形を取り戻してほしい。

「A～、まだいるならダンスを教える打ち合わせしない～？」

三奈に呼ばれてはっと顔を上げる。

焦凍も特別おしゃべりなタイプではないからか、私たちの間には不思議な空気が流れていた。

「…あ～、今ダメだった？」

三奈の言葉に私がぶんぶんと首を横に振り、彼女の方に向かおうとすると、彼は私の手首をパシッとつかんできた。

「悪ぃ芦戸、もう少し話させてくれ」

焦凍の言葉に三奈が面白そうな顔をしながら頷いた。