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「好きだ」
何の飾りもない告白に私は思わず笑ってしまう。
彼の思いを笑ったわけではない。断じて。
「ありがとう。でも今は、それどころじゃないんだ。ヒーローになるために。」
「いうと思った。だから今じゃなくていい」
焦凍は、そのきれいな顔でふわりとほほ笑む。
「いつか、Aの考えがまとまったら話してくれ。俺に」
「…うん」
私の考えがまとまった時。
それが果たしていつになるのかはわからない。だけど。
「きっといつか」
その約束は絶対に果たすよ。焦凍。
エレベーターが音を立てて４階への到着を知らせる。
彼の部屋は確か５階だからここでお別れかな、と私はエレベーターを降りた。
「じゃあまたね」
「あぁ、また明日」
寮になってから、クラスの距離が縮まったように思う。
それは私が、一つ壁を越えられたからこそなのかもしれないけど。
「俺は轟くんならいつでも歓迎だよ」
「うぇ？！お父さん！？」
私を待っていたかのように私の背後からにゅっと顔を出すお父さんに思わず固まった。
「親子でちょっと会議しよ」
そういってニコリとほほ笑むお父さんに私は小さく頷いた。
“親子で会議”なんて十中八九転にぃの話だ。
「真剣な話の前にふざけてもいい？」
「内容によ」
「Aは爆豪くんと轟くんのどっちが好きなの？」
「話を聞けよ」
思わず乱暴な言葉遣いになった。だってこの人、本当にふざけた内容話すんだもん
勝己と焦凍のどっちとかわかんないし第一今好きとか考えたくないし。
「今は仮免に片思い」
「うまいこというねぇ〜」
お父さんのふざけた返しに大きくため息をついた。
そして、お父さんの顔が変わったのを合図に私はすっと背筋を伸ばした。
「マスコミに流したやつは、おそらく雄英に潜む内通者の仕業だと思う」
「…うん。確かに雄英には内通者はいると思う。私もその結論に至った。でも」
“マスコミに流すメリットってあるのかな”とお父さんに首をかしげると、お父さんはふっと笑った。
「敵からしたらAは厄介な存在だよ。頭も切れるし個性も厄介。さらに自分たちの長の妹ときた」
確かに私が相手だったら私のことを真っ先につぶすかもしれない。
なるほど、つまり私は真っ先に敵連合に狙われる恐れがあるということか。
「それで俺から１つ、お願いがあるんだ」
お父さんからのお願いは結構無茶で、私は乾いた笑しか出てこなかった。
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