158.志賀オリジン 中編 ページ23
.
自信がなくなっていた。
攫われて、いくら最適だろうとしても敵の言葉に絆されたフリをしようとして。
勝己くんのようにずっとまっすぐに居られなかった自分が信じられなくなっていたんだ。
「…当たり前ですわ」
「！」
百ちゃんが私の方をみて呟く。
その声は小さかったけど、凛としていた。
「前期選抜だからということを抜きにしても、Aさんは間違いなくヒーローでしたもの」
「そうだよ。相澤先生言ってたじゃん」
百ちゃんと響香ちゃんの言葉に胸が熱くなる。
「大丈夫だよ」
瀬呂くんのシンプルな言葉を始め、みんなの言葉が私の胸を打ち付ける。
この人たちはどれだけ私を泣かせれば気が済むんだろう。
「志賀。お前はなんでヒーローになりたいんだ？」
切島くんの言葉に私は目を見開いた。
なんでヒーローになりたいのか。それは
「証明するため。ヒーローは脆くて、よわくて。それでも強くあろうとするのがヒーローだって証明するためだよ」
そして願わくば、一人一人が自分のためだけじゃなくて、ほんの少しでもいいから他人のために動けるような社会になって。
「ヒーローが暇になるような社会にしたいんだ」
私の言葉にみんなが驚いたように私を見つめるのがわかった。
ヒーローが暇になるような社会。
そんな平和な世界ができれば最高じゃない。
「俺は正直、志賀くんがヒーロー名を言った時、怒りが湧いてきた」
「…うん」
この言葉は、飯田くんの真っ直ぐな気持ち。
だから、私も彼の思いを受け取ろうと彼の目を見据えた。
「でも、そういうことだったんだな」
「！」
飯田くんの言葉に思わず顔を上げた。
「なろう、ヒーローに。みんなで。」
そういった飯田くんの言葉に私はふわりと微笑んだ。
そんな風に言って貰えて、嬉しかった。
私もここでヒーローを目指してもいいんだと思えた。
「正直Aちゃんがあの敵の妹だって知ったとき、ビックリしたわ。過去も、血も変えられないもの」
「梅雨ちゃん…」
梅雨ちゃんの言葉はもっともだった。
でも変に綺麗事言われるより、ずっと真っ直ぐだった。
「でも、Aちゃんはヒーローよ。敵なんかじゃないわ。私たちがそれを一番知ってるわ」
だから梅雨ちゃんのそんな言葉が、とても嬉しかったんだよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 357人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
