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“前のようになれると思ってた”。
その言葉が転にぃの素直な意思なのだとしたら。
「分かり合えるだと？ねぇわ」
「前のようになりたいのなら、前のような思いを抱いて欲しいね」
私の言葉に勝己くんがこちらを見る。
私は敵にだってなり得た存在。だから真っ直ぐなヒーローになんてなれないと思ってた。
そして何より、私は死柄木弔の妹。
そんな人が真っ直ぐなヒーローになりたいと言ったところで無駄かもしれないと思ったんだ。
「転にぃ、私はヒーローになるよ」
クラスメイトに何か言われるかもしれない。
そうしたら、もしかしたら立ち直れないと思う。
でも、相澤先生は私が誰よりもヒーローであると言ってくれたんだ。
その期待に応えたい。
「…分かり合えない人にAも加わっちゃったよ」
「ううん、私たちは分かり合えるよ。まだ間に合うよ」
間に合う。いつか私が、あなたを助けるから。
「…ヒーローたちも俺たちの捜査を進めていると言っていた。悠長に説得してられない。先生、力を貸せ」
「いい判断だよ死柄木弔。」
死柄木弔。
私のお兄ちゃんの名前じゃない。
死柄木弔は敵で、志村転弧はヒーローに憧れている子供…転にぃはまだ、小さい時から成長していないんだよ。
「先生…？テメェがボスじゃねぇのかよ。シラケんな…！」
「…転にぃを、拾った人なんだね」
“先生”とは一体誰のことなのだろうか。
真剣に考えるけど、私は結局何も思い浮かばなかった。
転にぃは学校の先生も嫌っていた。慕う人なんて思い浮かばない。
「黒霧、コンプレス。またこいつ眠らせろ」
「まったく、ここまで人の言うこと聞かないのも珍しいね〜」
「聞いて欲しけりゃ土下座して死ね！」
勝己くんが暴れるのに対して私は案外冷静だった。
私は、転にぃの裏にいる人を探らなきゃいけない。
転にぃが“先生”と呼び慕う人が誰なのか検討をつけないといけない、そう思っていたから。
でも勝己くんを眠らせる訳にはいかない。
どうにかしなきゃ、どうすればいいんだ。
コンコンコン
「どうも、ピザーラ神野店です〜」
ピザーラ…？どうして…
その時、“スマーシュ！！”という声と共に壁が思い切り蹴り破られた。
「オールマイト？！」
「黒霧！！ゲート！！」
「先制出縛！」
ヒーローが、助けに来てくれた。
ほら、転にぃ。ヒーローは助けてくれるんだよ。
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