154. ページ19
.
「んじゃまぁ、ちょっとお小言いってもいい？」
「はい、いいですよ」
相澤先生の許可をとったお父さんはヒーロー活動している時の表情と同じような顔になる。
私はそれを察して、思わず姿勢を正した。
「資格を取っていないのに個性を使って人を助ける。その心は素晴らしいけど、下手したら君たちの“ヒーローになる”って夢が崩れ去ってたよ。俺たちプロはそんなこと望んじゃいない。君たちのようなヒーローこそ、ちゃんとヒーローになってほしいんだ」
お父さんは私たちの顔をゆっくりと見回す。
「消太はこんなこと言うけど、たぶん君たちに期待してるよ。１学期だれも除籍にしないなんてこいつじゃありえねーもん」
「変なこと言わないでください」
「まぁそれはおいておいてもいいんだけど、君たちはこの段階でたぶんどの高校の生徒よりもヒーローだよ。だからこそ、道を誤らないでほしいんだ。」
お父さんの言葉がすっと胸に溶け込んだ。
拾い子の私を育ててくれたお父さん。私をいろいろなことから守ってくれたお父さんだからこそ。
「じゃあ中に行こうか。元気に行こう」
そんなのは無理だろう。二人のプロからお小言を言われたら。
「…もう、上鳴くんきて！」
私は上鳴くんを裏へ誘導し、思い切り放電させる。
そうすればアホになって面白いから。みんな笑顔になってくれるかなって。
案の定そうなって、私は少し息を吐いた。
「切島」
「あ、ちょ勝己くんずるいって」
万札を渡そうとする勝己くんに私は追いすがる。
いや、私もせめて半分は払いたい。
「ありがとう、あの時助けに来てくれて」
切島くんにそういうと、彼は目に涙をためた。
言えてなかったから。お礼を、感謝を、ヒーローに。
「いつまでもしみったれられてるとこっちも気分悪ぃんだよ。いつもみたいに馬鹿さらせや！」
「うーん、たぶん俺のせいでこうなってること嫌でもわかってるから、みんなの笑顔が見たいってところじゃないかな」
「Aちゃんまるで爆豪くんの翻訳機やな！！」
「どうも」
私は勝己くんの後ろについて歩いた。
「素直になればいいのに」
「…るせぇ」
ほんと、素直じゃないんだから。勝己くんは。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 357人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
