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「パイセン、今Aさんといるって。思いっきり邪魔しちゃうね」
横にいる梅ちゃんにそう言うと、梅ちゃんは困ったように微笑んだ。
「江口さん、それでも断らないから俺たちがどう対応すればいいのかいまいち分からないんだよな」
梅ちゃんの言う通りだった。
多分Aさんが俺たちの関係性をよく知ってくれているから、二人でいた部屋に邪魔することも嫌だと言わないのだろう。
でも何となく、彼女に申し訳ないと思ってしまう自分もいた。
「本人たちがいいって言ってるから良いんだろうけどね」
少しだけ頻度を下げようか、そう梅ちゃんに言うと彼は小さく頷いた。
慣れた道を歩くと見慣れたパイセンの家。
そして彼の部屋番号を押せば、パイセンの“どうぞ”という言葉と共に自動ドアが開いた。
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
家に上がれば、カレーのいい匂いがしてきて。
懐かしい匂いだなぁなんて、思わず笑みを浮かべてしまった。
「Aさん、いたんじゃなかったんですか？」
「寝ちゃった。残業漬けでしんどかったみたい」
パイセンの言葉に息を吐いた。
彼女のことは好感的だけど、彼女がいたら邪魔をしているということが身に染みちゃうから。
「残念。からかいがいのある人だからいたら面白かったのに」
「彼氏の前で言えるその勇気だけは讃えよう」
梅ちゃんの言葉に冗談交じりにそう言ったパイセン。
梅ちゃんも梅ちゃんで薄く笑いながらその冗談を受け流した。
「大変そうですよね。キャリアウーマンも」
「特にAの職場は女性があんまり居ないらしいからね。貴重なんでしょ、会社からしても」
パイセンは心配そうな表情をしながらお酒を口にした。
「いつも同じ職場で同じメンバーと顔を合わせる、そんな職場…俺達には考えられないねぇ」
そんな世界に彼女は生きている。
Aは俺たちのことを理解してくれているから、俺も彼女のことを理解したいと思うよ。
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