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江口のカレーはものすごく美味しかった。
レストランなんじゃないかってくらい。
「あ、ごめん電話」
「いいよ、出てきな」
私に“ごめんね”を表すように手を出してから江口は“はい、江口です”と言いながらリビングを出ていった。
大切な仕事の電話とかだったら出ないとまずいし、私はそれすら理解出来なほど子供じゃない。
江口が居ないと暇だなぁなんて思いながら、スマホでA3を始める。
江口と付き合ったからと言って私の推しが変わるわけじゃない。
好きな物は好きだし。
「綴くん、やっぱりオカンだよなぁ」
至くんもイケメンハイスペックなくせにゲーオタとか本当に素敵。
「ごめん、宏太朗と梅ちゃんが来るって」
「え、じゃあ私いない方がいいかな？」
「いや、いて欲しい。」
帰ろうと準備をした時、江口は私の腕を掴みながらそう呟いた。
そんなことを言われると思ってなくて、思わず彼の顔を見つめる。
「まだ、一緒にいたい」
切実な顔と声で言われたら、私は頷くことしか出来なかった。
江口拓也という男はとことんずるい。
「多分夕飯食べるだろうし、そのまま飲む流れになると思うんだけど明日は大丈夫？」
明日は土曜日で、仕事も休みだ。
ここに泊まっていくのも大丈夫だし、夜遅くまで酔っぱらいの介抱も出来る。
そう告げると、江口はニコニコ笑いながら“よかった”と言ってくれた。
「本当にあの二人は俺をとことん邪魔するよね」
「江口のことが大好きなんだね」
「うーん、そうならいいんだけど。梅ちゃんはホントのところ分からないなぁ」
困ったようにそう言う江口。
だけど梅原さんも多分、江口のことを慕ってるんだろうな。
慕っているが故の行動なんだと思う。
「あと10分位でここつくらしいから。それまではさ」
江口が私の腕を引っ張った。
ぽす、という音を立てて、私は江口の胸にすっぽり収まる。
「Aを充電させて」
不意打ちのその言葉に私は頷くことしか出来なくて。
そっと彼の背中に手を回した。
「っ、かわい」
あぁ本当に、頗る江口がずるい。
余裕そうな江口に勝ちたいと思ってしまう私もまだまだ子供なんだろうな。
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