50. ページ5
。
「うわぁ…本当にスパイスいっぱい入れてるんだね…」
「一応、こだわってるからね」
“すごいすごい”なんて言う彼女が可愛くて仕方がない。
俺自身が後輩を大切にしたくて沢山飲みに行ったり、職業柄同棲とかもできなかったりする。
そう告げても、彼女は“何も問題無いよ！食べられない人が大勢いる業界で江口は食べられているんだから”とにこやかに告げてきた。
彼女自身の貯金が有り余っているらしい。
彼女が言うには、職業柄イベントとかには足を運べないから、貯まっていく一方なんて俺には考えられないことを言っていた。
「お金の面は私が支えるし気にせずいつも通り生活してよ」
なんて言う彼女は、本当に強い女性だなと。
「作ってるから、座って待ってて」
「うん、わかった」
そう言うと、彼女はイヤホンをいそいそと取り出し、携帯に取り付けていた。
凡そゲームでもするのだろう。
この前ここのWiFiのパスワードを教えたし、タブレット端末でも使うんだろうな。
スマホの容量が足りない、なんて悲鳴をあげていた彼女が懐かしい、なんて思わず苦笑いを浮かべてしまう。
煮込む時間になって、彼女のタブレット端末を覗き込めば、あんスタのストーリー画面で。
「Amazing！」
ストーリーの中で日々樹渉がそう言っているのが聞こえて思わず目を逸らした。
目の前で、好きな人に自分の演技を聞かれるというのは、かなり恥ずかしいな、なんて思いながら。
「…もうちょっとでできるよ」
日々樹渉の少しだけ高めな声とはかけ離れた低い声で耳元で囁くと、彼女は驚いたように目を見張った。
「っひゃ…っ！！」
高めの声に赤く染る頬。
本当に可愛い…。なんて思ってしまう俺も、きっと重症なんだろうな。
「ビックリした…」
「愛をこめて作りましたよ」
「っあ、そうやって迂闊に使うの良くないと思います…！あんスタの中では日々樹渉が最推しなので…！！」
「俺は事実しか言ってないよ」
“もう！”と言う彼女。
からかいがいがあって、少しだけ照れてくれる彼女が可愛い。
だから、先に進むのは、もうちょっとしてから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 317人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
