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江口と並んで歩けば、彼の背の高さが身に染みる。
「今日、ご飯食べてく？」
「え、いいの？」
鍵を見せながらそう言ってきた江口に思わず口角を上げた。
“いーよ、俺作るから”と呟く彼。
江口が作るご飯、声優が好きな人はすぐに思い浮かぶだろう。
「カレー？」
「さすが、よく知ってるね」
“いひひ”と笑う彼につられて私も思わず笑ってしまう。
普段のカッコイイ姿から離れた、その可愛らしい笑顔────。
そんな姿を見られるこの特別な席に優越感に浸った。
「それ知ってから、食べてみたかったんだよね。江口のカレー」
「えー、言ってくれれば招待したのに」
「連絡先知らないのにどうやって言うのよ」
“それもそっか”なんて笑みを浮かべる江口。
なんでもない帰り道のはずなのに、その帰り道が特別な色を纏っているように感じた。
きっとそれは、江口のおかげなんだろうな。
「ねぇ」
「んー？」
江口が急に立ち止まって私を呼び止めた。
「好きだよ」
商売道具を使っているわけじゃない。
彼の素の声で告げられた思いに、本気度が伝わってきて。
「ふふ、ありがとう」
私より20cm以上も高い彼の頬を、腕を伸ばして両手で挟んだ。
「っえ？！」
「うるさい」
驚いたように目を見開く江口。
確かにこの瞬間を撮られたらまずいだろう。
でも、私はその手を緩めなかった。
「私も好きだよ。ずっと前から」
江口がいたから、江口の存在があったから乗り越えられたものがあるんだ。
私はそう言うと、そっと頬から手を離した。
「私はベタ惚れなんだから、自信もってよ」
そう言うと、恥ずかしそうに目を逸らした江口。
そんな彼が可愛くて、思わず笑ってしまった。
「ねぇぇぇぇえぇぇぇぇ、今笑ったでしょ！」
「笑ってないよ、気のせい気のせい」
“誤魔化せてないから！”なんて叫ぶ彼がまた面白くて。
幸せだなぁ、なんて思ってしまった。
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