好きと推し【江口拓也】 (ページ14)

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「江口くん凄くご機嫌じゃん。珍しいね」

「珍しいって俺いつもそんなに不満そうですか？」

「いや、江口くんが分かりやすくご機嫌なのが珍しいなって」

浪川さんがニヤニヤと笑いながら俺の方を見つめてくる。

梅ちゃんと宏太朗のニヤニヤから開放されたと思ったら今度は先輩のそれかよ、と思わず笑みを浮かべてしまった。

「ずっと欲しかったものが漸く手に入ったんですよ」

「へぇ、なになに？」

この業界、誰に聞かれているかも分からないので迂闊にいえず、彼には“猫です。すげぇ可愛くて”なんて言いながら笑みを浮かべる。

「猫！いいよねぇ…花江くんの家見てると飼いたくなる」

「あぁ、それ分かります」

猫じゃないんだけどな、なんて心の中で苦笑いを浮かべる。

それは何も今じゃなくて良いと思ったから。

「紹介できる日が来たら紹介しますよ」

「えっ、ほんと？いいの？」

「はい、ぜひぜひ。反応面白いので」

宏太朗推しとは言え、きっと彼女は浪川さんのことは知っているだろうから。

彼を連れていった時の反応も気になる。

「反応面白い猫なんてめっちゃ気になるね」

「いひひ、楽しみにしててくださいよ」

彼女へのハードルを少しだけ上げてしまったかもしれないが、崩れ落ちそうになるのを堪えながら声優と話す彼女を見るのは頗る楽しいのでそれはそれだと言い聞かせた。