9話 ページ11
森「太宰君。君がそんなに望むのなら、楽になれる薬品を都合してあげてもいい」
森さんは机の引き出しから紙片を取り出し、羽根ペンでさらさらと文字を書き付けた
太「本当?」
森「その代わり、ちょっとした調査を頼みたい。綾君もね。何、大した仕事じゃあない。危険もない。だが、君達にしか頼めない」
太「うさんくさっ」
太宰君がじと目で森さんを見るが、森さんはお構いなしに続けた
森「横浜租界の近くにある、擂鉢街は知っているね?その近辺で最近、ある人物が現れたという噂が流布している。その噂の真相を調査してきて欲しい。──これは『銀の託宣』と呼ばれる権限委譲書だ。これを見せればマフィアの構成員は何でも云うことを聞く。好きに使い給え」
森さんは銀の託宣を差し出す
『……森さん、それ、私も行かなきゃダメですか……?』
森「もちろん」
ええ……めんどくさ
絶対色々巻き込まれるじゃん
太宰君は差し出された紙片と森さんの顔を順繰りに見て、云った
太「ある人物って?」
森「中ててご覧。綾君も」
え、なんで私まで…
てか私の場合考えるまでもなく知ってるんだけど
太「考えたくない」
『……………』
森「いいから。綾君、そんな露骨に嫌そうな顔しない」
森さんをじと目で見た後、ちらっと太宰君を見るとばっちり目が合った
思わずどデカい溜息が出た
『……仮にもマフィアの最高権力者が、街の噂ごときを心配する筈がない。それだけ重要で捨て置けない噂ということになる。かつ『銀の託宣』を使う程の噂なら、恐らく重大なのはその人物じゃなく、噂そのもの…』
太「真相を確かめ、発生源を潰しておかなくてはならない噂。流布するだけで害をなす噂。ついでに専門家や優秀な部下達じゃあなく僕達を使う理由となれば、その人物は1人しかありえない。現れたのは──」
──先代の首領だね?
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作者名:朱音 | 作成日時:2020年10月11日 18時