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「今降りられても困る」
夏姫さん、アンタ また怪我して治療受けたんだって?
私はアルコールに滅法弱い。
消毒用エタノールにでさえ過敏に反応してしまうほど酒類に耐性がないのだ。
肝臓が弱いのか、はたまた有能な能力故の反動なのか。その理由は未だ分からない。
今回もまた消毒液にあてられて気を失ってしまったと推測される。
どうやら、回収係として彼が呼ばれたらしい。
貴重な時間を私のせいで潰してしまったかと思うと申し訳なさと己の不甲斐なさにため息が出る。
「このまま部屋まで送るよ」
あ、夏姫さんに拒否権は無いからね。
これはテコでも折れないな。
きっと、今の彼はいい笑顔をしているだろうことは容易に想像できる。見えないけど。
私は半ば諦め 体の全面的に彼の背に預けることにした。
薄花色に顔を埋めてみる。
花の香りが鼻をくすぶった。
『(落ち着く)』
アロマセラピーは心を落ち着かせると聞くが彼は花ではない。ではなんだ?
……まあ、どうでもいいか。
心地よい揺れと温もりが思考を乱し 意識を遠くへ連れていこうとする。
たまには、背中を預けるのも良い、な……
遠のく意識の外で クスリと柔らかな声が私を見守っていた。
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作者名:しゃっぽ・kohaku | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年12月5日 9時