Line２：背中 【夏姫side】 ページ3
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───いつだって、私は誰かを背にして戦ってきた。
無理だと言われた劣等戦闘に私は嬉々として先陣を切り、弱音を吐く同僚達に言葉ではなく背中で叱咤をかけ幾度となく勝利をもぎ取っている。
まだ未熟な頃
目の前から命の灯火が消える光景を、何度も見てきた。
父も母も私の目の前から消えたんだ。
………もう、誰も喪いたくはない。
だから私は今日も戦場を駆る。
たとえ誰にも認められまいと。
尊敬と畏怖、似て似つかない感情の視線を背中に受けながら。
敵陣へと銃口を向ける。
──夏姫さん──
もう二度と、大切な存在を喪わないように……
………揺れる意識の中、見覚えのある薄花色が視界をチラついた。
その色には見覚えがあった。
私は無意識にその主の名を口にする。
ふと、心地よく揺れていた振動がピタリと止まる。
「──夏姫さん？目が覚めましたか？」
薄花色が喋った。……いや、正確には薄花色の彼が言葉を発したのだが。
薄花色の髪の隙間からほんの少しだけ見える端正な鼻筋と眼鏡。
『……アキ』
──北条 暁──
2つ年下の彼は、防御術のスペシャリストでその力量は今世の白帝と云われている実力者だ。
社交的で人々の中心にいるような彼は 私のような日陰者にも目を向けてくれる広い心の持ち主である。
そんな彼とは、ひょんなことから交流を持ち始め 今では恋仲の域にまで達している……らしい。
何故 私なのか今でも疑問が尽きないが彼が私を選んでくれるなら私はそれに応えようと思う。
本当は、恋人なんて作る気はなかったんだけど……断れなかった。なんでだろう。
再び振動が体全体を伝い揺れ始めた。
これは、歩いている？
だんだんと覚醒していく意識で今の状況を把握しようと視界を広げた。
薄花色はやはり彼の髪で当たりらしい。男にしては長い髪は傷みも無く艶やかで、女の同期から羨ましがられていることは本人も耳にしているだろう。
顔が見えないということはこれは後頭部か。
髪を伝い下へと視線を動かす。
夏姫より広い背中。非戦闘員といえどやはり男。髪よりもこちらの方が羨ましいと思うのは己だけだろうか。
投げ出された足はしっかりと彼の腕によって固定されている。
漸く背負われていると自覚した夏姫は、すまないと謝りながら降りようと体を離した。
しかし、暁は逃がさないとでもいうかのように掴む腕に力が入り背負い直す動作を起こす。
反動で前に体重がいき、私は再び彼の背中に引き寄せられた。
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作者名：しゃっぽ・kohaku | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年12月5日 9時
