孤独なサモナー[5]

Log215 ページ19

小竜は言葉少なめに発言した。

彼だって〈三日月同盟(みかづきどうめい)〉の戦闘班幹部として状況は読めている。

もし自分が余計な口出しをすれば、マリ姉が苦しむことになるのも判っている。

けれど、そう言う意味で言えばマリ姉自身が協力したい気持ちと、ギルドを守りたい気持ちの間で引き裂かれているのはすでに傍目から見ても明らかなのだ。

ヘンリエッタさんも同意した。


ヘンリエッタ「ええ、協力できるかどうかは手法によります。
まったく目処が立たない計画に乗る訳には参りませんでしょう？
シロエ様、Aちゃん。」


本来ならば自分が矢面に立とうと考えていたはずのマリ姉は2人の部下が前に出て、ちょっと鼻白んだ様だったが、すぐに自らも【シロ坊、話てや】と促した。


シロエはその言葉に、ほんの半瞬だけ喋る内容を整理するかのように見えたが、唐突に結論を述べる。


シロエ「資金が必要です。
とりあえず、金貨５００万枚。」


端から聞くと途方もない話だ。


ヘンリエッタ「そんな無茶なっ！？」


ヘンリエッタさんが悲鳴を上げる。

まぁ、そうですよね。
その気持ちは分かります。

〈三日月同盟(みかづきどうめい)〉の金庫を預かっている彼女は、かなり正確にギルド資産を把握しているのだ。

〈三日月同盟(みかづきどうめい)〉のギルド口座にある資金は、金貨にして6万枚。

在庫アイテムなどを徹底的に処分すれば、10万枚では用意できるだろう。

ギルドメンバーの個人的な財産を残らず処分すれば、おそらく50万枚までは達成できる。

しかし、それが限界だ。

メンバー全員の資産を投げ打っても、50万枚以上は捻出できない。

レベル90であるヘンリエッタさんの手持ちの資産が2万ほど。

個人で5万も持っていれば相当に資産家である状況を考えれば、金貨500万枚というのは桁外れな金額だ。


マリエール「そんな金額どうやって集めるんっ。
うちら、こういっちゃお終いかもしれんけど、――零細ギルドなんやで？」

小竜「お、お、お金ですか！？」


案の定、マリ姉と小竜の口からは絶望的なうめき声が零れた。

戦力や労働力というのならば【頑張って】みることは出来る。
しかし資金調達となると、彼女達にははなから無理な難題にしか感じられないのだろう。

★☆★
2019/10/31

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