Log188 ミノリside ページ41
〈大災害〉のあと、街は混乱と閉塞感に包まれていた。
突然の出来事に皆が呆然として、何をして良いかも判らなくなってしまったのだ。
最初の数日間の間、街が大規模な争乱状態にならなかったのは、多くのプレイヤーがこの出来事をどう捉えて良いか判らず、もしかしたら何かしら手の込んだ冗談のようなモノではないかと期待していたせいだと、私は思う。
自分たち姉弟もそれはまったく同じ状況だった。
初めの数時間は何が起きたか判らなかった。
それに続く数日間で、何が起きたかは判ったものの、どうしてそれが起きたのかは判らなかった。
この「どうして」については、未だに判らない。
今になって判ったのは、「何故このようなことになってしまったのか?」という答えが出るはずのない問いに我を忘れて、最初の数日間という取り返しがつかないほどに貴重な時間を失ってしまったと云うことだけだ。
それにつづく何日間かの記憶は、実を言えば霧の中にある。
空腹だったことは覚えている。
食事の仕方もよく判らなかったのだ。
マーケットで幾つかの食料アイテムを買い、弟のトウヤと分け合って食べた。
街から出ようとして、襲われ、訳も判らぬうちに全財産を奪われた。
街から出るのならば銀行の貸金庫に必要以外のアイテムを全て預けるべきだというシロエさんのアドバイスを思い出したのは、一文無しになった後だった。
多くのプレイヤーは知己と連絡を取り情報収集に努めているようだった。
しかし、私達は初心者プレイヤーで、頼るべき相手は居なかった。
たった一人だけいたが、その名前に連絡を取ることははばかられた。
もしかしたら〈大災害〉の直後だったら連絡を取れたかも知れない。
しかし〈大災害〉に続く数日間を茫然自失のまま過ごした二人は、財産を失ってしまい余りにもこの世界の中で足手まといだった。
自分とトウヤは、仲が良い姉弟だと私は思う。
聞くところによれば、中学生の年頃にもなると、兄妹や姉弟など多くの場合その関係は険悪になるという。
その年代の潔癖さや自立心は、同年代の兄妹を排斥対象に峻別してしまう。
目障りでしかたがなくなるとクラスメイト達は云う。
しかしそうは云っても、自分とトウヤは仲の良い姉弟だ。
喧嘩しようとは思わないし、そもそもトウヤを助けたいと、私はいつものように思っていた。
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2019/10/28
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ハカタ(プロフ) - 更新待ってます!本当に楽しかったですw (2018年11月25日 22時) (レス) id: 05436ab3ab (このIDを非表示/違反報告)
里夜(プロフ) - sakuraさん» sakuraさん:ありがとうございます。頑張ります!! (2018年6月9日 12時) (レス) id: 197e7505f2 (このIDを非表示/違反報告)
sakura(プロフ) - 楽しく読ませていただきました これからも読ませていただきます 更新がんばってください (2018年6月8日 21時) (レス) id: f15ebf0ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2018年3月6日 16時