Log888 マリエールside ページ11
直継「でも、満杯なんだって。
宿屋と町長の家の風呂には、俺達が押しかけてるから。
ちなみに宿屋の風呂は男子専用で、町長の家は女子だぜ。」
マリエール「うへぇ。
わかった。
……うち、もうちょい涼んでいく。」
直継「へいへい。」
あぐらを掻いて座り込んだ直継やん。
草の上にマントを広げてへたり込んだ私。
二人の上から、月の光が白々と降り積もる。
頬を撫でる涼やかな風に私は視線だけを直継やんに向ける。
直継やんは、その白い月を見あげながら、手に持った大きな南国風の葉を、団扇のように使って私を扇いでいるのだった。
あ……。
戦いの余熱で火照って騒いでいた血液が、やっと少しだけ落ち着きを取り戻したように私は感じる。
何も云わずに、ただ近くにいてくれる、このひょうきんな青年のお陰で、ざわめいていた気持ちが穏やかになって行く。
マリエール「なー。
直継やん。」
直継「なんだー。」
のんびりした直継やんの声が、戦いが終わったという実感を私に届けてくれた。
戦った。
生き残った。
そして、この町を、守りぬく事が出来た。
戦闘の最中、敵の攻撃でアキバの大神殿に転送されてしまった〈冒険者〉は居るけれど、それもわずかな人数だ。
マリエール「うちら、良くやったよね？」
直継「もちろんだぜっ。
俺達は、この町を守りきったんだ。」
いまの自分は、普段にもまして笑み崩れているだろうと私は自覚する。
きっと甘すぎて見ていられないような笑顔だろう。
でも、それも気にならない。
この月明かりの下で、いまはとにかく頬を撫でる直継やんの心遣いに浸っていたかった。
☆★☆
2020/01/01
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作者名：豆乳ココア | 作成日時：2019年12月9日 23時
