Log864 レイネシアside ページ36
頭を振ってへこたれる私。
クラスティ様と居ると、調子を崩される事ばかりだ。
穏やかなマイハマの自室が懐かしい。
私は本当に引きこもりで、食っちゃ寝の植物的で怠惰な生活が好みなのだ。
最大の趣味は日向ぼっこであり、早々に老婆になれたら満喫できるなどと考えるほどだった。
そんな私の主義主張からすれば、ここ最近の自分は変節した、堕落したとそしられても仕方がないと思う。
高山「了解しました。
では、次の地点からは周辺監視体制を増やす方向性で。」
高山三佐の報告が終わる頃には、クラスティ様も着替えを済ませていた。
鎧は相変わらずだが、肌衣は代えたらしい。
落ち着きをはらった表情は【エターナルアイスの古宮廷】で見せていたものと変わりなく、いっそ腹立たしいくらいだ。
クラスティ「どうですか戦場は。」
近づいてきたクラスティ様は尋ねかける。
身長差があるので、下から見上げるような姿勢になってしまう私は、不愉快で釈然としない気分になってしまう。
戦っている最中の無邪気で楽しそうな顔と、それとはうらはらの消え入りそうな儚さは、いまのクラスティ様からは感じられない。
あれは幻だったのだろうかと思いたくなるほどの、取り澄まして、礼儀正しい、【妖怪心のぞき】の方のクラスティ様が目の前にいるばかりだ。
クラスティ「怖かったのですか？」
自分の物思いに捕らわれて返答が遅れた私に、クラスティ様は揶揄するような言葉をかける。
レイネシア「そんな事はありません。
クラスティ様が守ってくれると思っていましたから。
それにA様の白虎ちゃんもいますし。」
クラスティ様が宮廷風の仮面をかぶるのならば、こちらにもその覚悟はある。
そもそも、貴族的な言い回しで云うならば自分の方が圧倒的に経験があるのだと、私は言外にそうにじませてやった。
クラスティ「――随分と人気が出ているようですよ。」
私がくるっと振りかえると、遠巻きにクラスティ様と私を見つめていた〈冒険者〉の群が、ぴたっと静止する。
私としても、非常に居心地が悪い事態なので、手を小さくふって微笑んでみると、多くの〈冒険者〉が笑顔になって、任務に戻っていくようだ。
☆★☆
2019/12/29
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作者名：豆乳ココア | 作成日時：2019年12月8日 23時
