Log852 シロエside ページ24
ミノリ「……助けて下さい。
シロエさんの力が必要、、、、、、、、、、ですっ。」
胸の中にしっかりと閉じ込めた喪失感を押し殺した声に、僕は変事を直感した。
ミノリが自分を目指していた事に、僕は気が付いている。
僕が戦場でやる事の全て、それこそ歩き方から、何気ない癖、考え方まで観察して覚え込もうとしていたミノリだからこそ、僕のほうも自分の知っている程度の知識は何でも教えてあげたかった。
そしてその教えにミノリはいつだって100点以上の努力で返してくれた。
いったいミノリが元の地球でどんな人生を送ってきたか、僕は知らない。
尋ねた事もない。
でもミノリの中に見える責任感は、僕がついに持ち得なかった徳だ。
僕には自分が逃げて回っていた自覚がある。
自分で自分の居場所を作ると云う事から、だ。
ミノリはそこから逃げない。
いままでも逃げてこなかったし、これからも逃げないだろう。
最初から自分が戦う場所を自分で決める少女なのだ。
自分を慕ってくれるのは嬉しいが、自分こそミノリの確かさに救われているんだけどな、等と僕は考えていた。
だから、ミノリが僕に【頼った】事はないように思う。
僕を信頼してくれ、おそらく気を許してくれ、学んでくれようとはしたけれど、甘えてくれた事はないように思う。
それは彼女なりのプライドのありようなのだろう。
僕はそこまで含めて、ミノリという少女を評価していた。
そのミノリがまるで今にも零れそうになる涙を必死に食い止めるような声で念話をかけてきたと云う事に、他の誰でもなく自分を頼った事に僕は弾かれる。
天幕の入り口から覗く外の景色は、もはや紫色に近づきつつある夕暮れだ。
ミノリ「犠牲者が出ました。
ルンデルハウスさんです。
彼は……」
ミノリの離す念話の声の後ろで、乱れた呼吸音と叫ぶ声が聞こえる。
念話機能は、出来の悪い携帯電話のようなものだ。
受信側は音声再生が鼓膜付近なので周囲に音が漏れる心配はないが、話す側は口頭で喋る必要もあるし、周囲の音も拾ってしまう。
どうやらミノリはまだ戦場か、その近くにいるらしい。
周囲が騒がしい感じだし、女性の声が聞こえる。
ミノリ「彼は」
五十鈴「ルディは……〈大地人〉です。」
突然声が割り込んでくる。
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2019/12/27
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年12月8日 23時