Log850 五十鈴side ページ22
〈冒険者〉と〈大地人〉は違う
そもそもまったく違う存在なのだ。
「なる」だなんて、そんな事出来るはずがないのに。
そうだ。
ルディは悩んで傷ついていたではないか。
幾ら戦ってもなかなか経験値が貯まらないとぼやいていた。
私たちの半分の半分さえ経験値が貯まらず、なかなかレベルが上がらない事に苛立ち、それであんなにも修行を焦っていた。
ルディが天幕でごろごろしている姿など、私は見た事がない。
わずかな時間でも暇を見つけては、厳しい修行や瞑想をしていた。
本人は貴公子としての当然の義務だとか、男子の本懐だとか云っていたけれど、そこに焦慮と苛立ちが含まれていないはずがなかったのに。
私は判っていて見過ごしたのだ。
ごめんなさい。
ごめんなさい……ルディ……。
余りにもルディが幼くて、無邪気に望むから。
私も夢を見たのだ。
〈大地人〉が〈冒険者〉になれるなんて夢を。
トウヤ「ルディ兄は……〈大地人〉なの……か？」
トウヤの声に私は頷く。
頷けば頬を伝う涙が顎からぽたりぽたりと垂れるのだが、そんなのはどうでも良かった。
これは私に与えられた罰なのだ。
あんなに優しかったルディを。
ただの田舎ものでひょろりとした自分を女の子扱いしてくれたルディを。
そばかすが気になっているちっとも垢抜けない自分に、いつでも【ミス】と呼びかけてくれたルディを。
最後までちゃんと止めもせずに、足を引っ張ってばかりで……。
そのくせ、お馬鹿だとか犬っぽいだとか好き勝手に扱って……。
話しかけてもらえて嬉しかった、褒めてもらえて嬉しかった、女の子扱いしてくれて嬉しかったと伝えなかった自分の罪なのだ。
セララ「あ……っ。」
セララがうめくように呟く。
そして即時回復呪文インスタント・ヒールをかけて、その胸に耳を当て、表情を曇らせて、また即時回復呪文インスタント・ヒールを繰り返す。
五十鈴「え、まさか……。」
私はあり得ない希望を見いだして、セララちゃんに詰め寄る。
セララ「判りません。
脈拍は掠れてるけれど、ヒールをかけるとわずかに反応がある気がして……。
でも、ごめんなさい。
蘇生が効かないのじゃ……。」
私はせっかく取り戻した希望が粉々になるのを感じる。
だが、その言葉を強く受け継いだ少女が一人いた。
★☆★
2019/12/27
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作者名：豆乳ココア | 作成日時：2019年12月8日 23時
