Log747 レイネシアside ページ7
鋭く響く笛の音。ざわめく会議室。
慌ただしい靴音に、何か押し問答をするような怒声。
まるで舞踏会でエスコートされるかのように手を引かれた私は、いつの間にか夜風が渡るテラスにいる。
振り向いた視界には混乱する会議場と、そこから抜け出して追いすがる何人かの騎士。
その先頭にいるのは、彼女に厳しくも慕わしい祖父の顔だ。
セルジアット「行くのか?」
何も考えられないほど混乱した頭なのに、その言葉だけは澄み切った夜空に描かれた光の文字のように聞こえて、私ははっきりと頷く。
祖父の顔がほころんだような気がしたが、それは気のせいだろう。
そんな事を考えてられたのも一瞬だけだった。
強い上昇気流に乗って、バルコニーすれすれを滑空してきた恐ろしい翼を持つ魔獣――〈
クラスティ「失礼。」
涼やかな声は、白皙の戦士クラスティ様のもの。
がっしりとした腕で私を横抱きにしたまま、クラスティ様は脚力だけで、〈
クラスティ「しがみついてて結構ですからね。」
涼しげな声がなかったら気死してしまうような状況の下、二人を乗せた〈
脇に控えるのは魔術師風の青年と黒髪の少女を乗せた、〈
そしてA様が乗っている〈
置き去りにしてきたのは祖父と貴族達の領主会議。
耳元でうなる轟々とした風にドレスを持って行かれないように、私は必死でクラスティ様の胸にしがみつく。
私の【出来心】は、こうして止めどない坂道を転がり始めたのだった。
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2019/12/14
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年12月4日 20時