Log775 ミノリside ページ35
昼過ぎ、私達一行はチョウシの町へと向かっていた。
疲れはたまっていたけれど、一行から生気は失われていなかった。
たった一晩だったが、暗闇の中で過ごした濃密な時間は、私達五人の潜在能力を研ぎ澄まさせる効果があった。
もちろん、【ラグランダの社】から続く戦闘が、私達のレベルを幾つか上昇させたと云うことでもある。
戦闘を繰り返す度に連携は徐々に洗練されてゆき、時には声を掛けることなく仲間の考えが判るように思える瞬間もあるほどだった。
田舎道を歩いていく私達五人は、森林にいるときよりはリラックスしているが、それでも警戒を緩めていなかった。
互いが互いの死角をカバーするように周辺を観察しながらも、それでも和やかな雰囲気で歩いていける。
戦闘はいまでも怖いけれど……。
怖いけれど、恐れることはなくなったと私は思う。
本当に恐ろしいのは、恐怖が血管の中を流れて手足が縮こまり、自分の生を自分から手放しかける感覚だ。
それは【諦め】に似ている。
この【死】の無い世界において、【諦め】は【死】と同じ意味を持っている。
逆に云えば、諦めさえしなければ、チャンスはあるのだ。
みっともなくても、震えていても、立っていれば何かが起きる可能性はある。
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2019/12/16
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年12月4日 20時