Log744 レイネシアside ページ4
クラスティ「はい、レイネシア様。」
A『はい。』
クラスティ様、A様が恭しく黙礼をするのに合わせて、私は一歩前に出る。
会議テーブルを挟んで、その距離は1mもない。
レイネシア「これからアキバの街に向かいます。
供をして下さい。」
私は、はっきりと告げた。
頭の中はしんと静まりかえり、会議のざわめきさえ遠く聞こえる。
自分の鼓動と、熱く火照る耳たぶの温度。
ほんのわずかに細められたクラスティ様の表情の変化が、いつもよりずっとよく判る。
A様に関しては予測していた様だった。
レイネシア「クラスティ様は、騎士の剣に掛けて誓って下さいました。
会議の間、わたしに侍はべって下さると。
ですから願います。
わたしはこれからアキバの街に向かわなければなりません。」
クラスティ「アキバの街へ。
――何を?」
レイネシア「義勇兵を募ります。」
私の言葉に、領主達が息を飲むのが判った。
アキバの街を統治しているのは〈
アキバの街の〈冒険者〉達は、〈
兵力とはこの世界において騎士団である。
それはつまり、自らの領地でもない街に赴き、許可も受けずにその騎士団に直接、戦闘への参加を促すと云うこと。
貴族社会の常識から云えば、〈
しかし、その義勇兵を募る旅に、クラスティ様――〈
この場合、私は騎士としてのクラスティ様、個人としてのクラスティ様に護衛を依頼しているに過ぎない。
理屈としては、クラスティ様が仮に護衛を受け入れたとしても、彼がその義務を持って〈
最悪、私は扇動者として断頭台に上ることになる。
そうである以上、クラスティ様がその護衛を受け入れることはないし、そもそもセルジアッド公が、今や残る1人の孫娘に、そんな勝手を許すはずもない。
貴族達の間には、落胆とも納得とも喜びともつかない、複雑なうめき声が上がる。
だが、私はまっすぐにクラスティ様を見つめ続けた。
そんな時、彼女から放たれた言葉。
A『姫、それは、とてもとても面倒くさいと思いますが?』
レイネシア「――はい。」
私はあっさりと自らを手放してみせる。
★☆★
2019/12/14
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年12月4日 20時