Log479 シロエside ページ33
クラスティ「わたしはここでセルジアッド卿といま少し歓談していたく思う。
シロエ君であれば、えーっと、そうだ。
――“この舞踏会は草刈り場”なのだろう?
その絶技の一端を〈
ク、クラスティさん。
判ってて云ってるな!?
く、くそぅっ
僕は血の気が引いていくのを感じる。
高レベルのモンスターに立ち向かうのだって大会議で論陣を張るのだって出来なくはないが、そもそも僕は周到に計画を整えて、つまり必勝の策を持って戦線を構築する参謀タイプの人間である。
これが例えば、十日前に予告されたピンチであれば、どのような無理難題でもなんとか切り抜ける策を見つけただろうが、いきなりふられては目を白黒させるしかない。
しかし〈
僕としても反論も難しい。
何と言っても、僕は先ほどまでクラスティさんとミチタカさんが要領よく交渉を進めていたために、実労働はさぼっていた訳だ。
もちろん、今後の方策を考えながらではあったが、その糸口がつかめていない以上、仕事を割り振られれば罪悪感から引き受けざるを得ない。
はぁ……。
今回は恥をかいてくるしかないかぁ。
ションボリを肩を落としかけた僕だが、視線を感じてふと顔を上げるとヘンリエッタさんの艶然とした微笑に出会う。
ヘンリエッタ「シロエ様。
肩を落とすのはお似合いになりませんわ。」
シロエ「そんな事言ったって。
……こればっかりはねー。」
半分以上自棄になった僕はため息をつくが、ヘンリエッタさんは立てた人差し指を女教師のように左右に振る。
ヘンリエッタ「殿方は自信のないところを見せてはいけません。
それは空元気であってもです。
ギルドマスターならばなおさらですよ?
マリエはお馬鹿でお間抜けで脳天気で、もう一つ云えば胸が大きいですが――そこのところだけはよく判っていますわ。」
その言葉は、まさにその通りだろう。
マリ姐の笑顔は、その笑顔があり得ないような状況でこそギルドメンバーを励ましてきたはずだ。
僕は反省する。
色々と知恵が回るのはよいけれど、取り越し苦労やまだ見ぬ未来のことでくよくよするのは自分の弱点だと把握もしているのだ。
★☆★
2019/11/19
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年11月9日 23時