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やがて一連のフレーズが終焉を迎え、姫達は優雅に膝を折る可憐な感謝の礼を行なう。
セルジアット「さて、二曲目だ。
……諸君らも踊ってくると良い。」
ミチタカ「は?」
ミチタカさんが何とも間抜けな表情で老セルジアッドさんに問い返す。
セルジアット「先ほども云ったろう?
この舞踏会は会議に前だつ社交の場なのだ。
周囲を見渡しても見たまえ。
皆が君たちに興味津々だぞ。」
確かにそうね。
セルジアット「今わたしが代表して話しかけているのは〈冒険者〉との付き合い方をみんなが知らずに警戒しているからに過ぎない。
これではお互いの信頼はともかく、情報交換もままならないのではないかね?」
〈自由都市同盟イースタル〉を代表する老領主は、そう言うと威厳たっぷりの横顔に茶目っ気を覗かせる。
セルジアット「皆のものも客人のダンスを見たがっている。
どうだね、そこの黒髪のお嬢さんは?」
突然話を振られたアカツキは、それこそ電流でも流されたかの如く小さく飛び上がると、いそいそとシロエの影に逃げこむ。
アカツキ「わたしは主君の忍び。
忍びは影にして護衛。
こ、こ、このような公の場で姿をさらすなどとんでもない。」
続いて視線をやられたミチタカさんは、多少引きつった表情を張り付かせたまま首を左右に振る。
ミチタカ「いやいや、俺は不調法ですからね。
とんでもない!」と。
生産が専門とは言え、そこはさすがに〈冒険者〉の身体能力だ。
残像が出るほどの速度で首を振っているのが可笑しかった。
まぁこの場で押し出しが良いのはクラスティだろうな、とシロエはくすくす笑いながら考えるのだろう。
〈狂戦士〉だなどという恐ろしげなサブ職業と称号を持っているクラスティだが、見かけは理知的な美丈夫だ。
アメリカンフットボールチームに居るような【身体付きもがっしりしたエリート秀才タイプのハンサム眼鏡】と云う表現がぴったりの彼だ。
ポジションで云えば、クオーターバック。
しかも中央突破が出来る司令塔だろう。
体躯がよいからタキシードも似合っているし、おあつらえ向きに同じギルドの女性も同伴してきている。
クラスティ「ここはシロエ君の出番だな。」
しかし、声を掛けようとしたシロエより先に、そのクラスティ本人が重々しく口を開く。
そんな冗談を、と言いかけたシロエだが、機先を制したクラスティは至極真面目な表情だ。
★☆★
2019/11/19
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年11月9日 23時