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セルジアット「中央が我が孫娘、レイネシアだ。
右にいる新緑の髪をもつのがオウウのレスター侯の娘、アプレッタ。
赤毛の情熱的な娘が自由都市イワフネの領主スガナの孫娘。
いずれも今年社交界に顔見せとなるな。」
なるほど……。
三人ともかなりの美少女だな。
こうして『お披露目』をして、社交界デビューとなるわけね。
見守るうちに音楽が流れ始める。
そのような事情であれば、こういった公衆の面前で踊るのは初めてのはずだが、三人ともそれは感じさせないステップだった。
とはいえ、まだ表情は硬い。
緩やかな円舞曲は弦楽に木管楽器が加わってより一層深みを増した。
私はその音楽に聞き覚えを感じる。
〈エルダー・テイル〉であった時代に、ゲームを立ち上げる度に耳にしていたオープニング曲だったのだ。
その驚きと懐かしさを共有できたのは、この大広間の中で、私達一行の11人だけだった。
弾かれたように視線を合わせる私たちは、すぐにも苦笑めいたものに満たされる。
視線が絡んだ瞬間に、自分たちが本当に異世界に来てしまって、帰れる当てがないという望郷の念を共有したのだった。
だが、だからといって取り乱して良いような立場でもないし、取り乱すには責任がありすぎた。
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2019/11/19
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作者名:豆乳ココア | 作成日時:2019年11月9日 23時