35話 By春雨 ページ36
まだ僅かにざわめきが反響する体育館の中、正確にはそのステージの上であたしと吉良は探索を始めていた。
ステージの上…下からぱっと見ても、カーテンで隠れて見えなくなっている両サイドは、
下から見えないしいいやとでも言うように段ボールやら何やらでとっ散らかっていた。
段ボールは空の物や既に潰れている物もあるけど、殆どが開かれていて中身が見えている状態だ。
それにしても、と空の段ボールの山を掻き分ける手を止める。
最近はドラマの撮影とか台本を繰り返し読んだりとかで、こうしてステージに登壇する
事がなかったから、初見の場所である割に少しの懐かしさを覚える。
…此処がコロシアイとかふざけた事を強要する場所でなければ良かったのだけれど。
そんな事を考えていると、「ねえ、有栖ちゃん」と吉良に呼ばれる。
「…何?」
あたしが少し棘のある声色で問うと、「見てよ、これ」と吉良が片手に物を掲げた。
「それ…ガムテープ?使われた形跡があるわね」
吉良が掲げたガムテープは、一見何の変鉄もないけど、よく考えるとあまり埃が付着しておらず、しかも一番付着しやすい箇所である、手で切られたらしい切り口にも埃がないのが気になる。
それに、少し捲れた切り口、つまり粘着部分は完全には乾いていない。
「そう。完璧に使われた形跡があるよね?しかも用途の分からないようなガラクタばかりの所に
お馴染みの道具が転がってるなんてちょっと変じゃない?」
吉良の言う通りだ。でも…
「…だからどうしたの?」
あたしが無愛想に言い退けると、「えっ」と固まる吉良。
「工作や偽装は置いといて、殺人に役立てろなんて言うわけないでしょ。
ガムテープで絞殺でもしろって?」
言い切ってから、小馬鹿にしたように吉良を見やる。でも、当人の反応を見て
自分が何を言っていたのか、今になって自覚する。
「えっと、有栖ちゃん?まさかコロシアイに賛成…」
「するわけないでしょ!今のは…そう!演技よ!」
若干青ざめた顔に「だよねー」と愛想笑いを貼り付ける吉良を見て、
うまく誤魔化せていない事を知りつつも「何故そんな事を言うのか」と言及
されなかった事に内心ほっとする。
…もし聞かれたら、少なからずあたしの家庭事情を話す事になってしまうだろうから。
勿論殺人を犯そうだなんて思ってもいない。多分、状況に感化されていたんだろう。
発言には気を付けないと。
そこで一度会話を断ち切り、あたし達は探索を再開したのだった。
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riiu(プロフ) - 更新しました! (2020年2月16日 14時) (レス) id: d32ce14729 (このIDを非表示/違反報告)
riiu(プロフ) - 了解です!では探索の方いきますね!更新します! (2020年2月16日 13時) (レス) id: d32ce14729 (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - 春雨さん» すみません!!どうしたら良いのかと思っていたのですが……話を進められそうなら進めて構いません!グループを組む場面でも大丈夫です! (2020年2月16日 13時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - riiuさん» 主催者でない私が意見するのもどうかとも思ったのですが、私はグループ組んだ後の話を進めてもいいと思いますよ。確かに話が大幅に進んでしまうと不味いかもしれませんが、現段階ではそこまで大幅に話が飛んだりはしないと思いますし。 (2020年2月16日 13時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)
riiu(プロフ) - えーっと…更新したいのですが、まだ話の中でグループが組めてない子達がいるので、そちらを先にやった方がいいでしょうか…? (2020年2月16日 12時) (レス) id: d32ce14729 (このIDを非表示/違反報告)
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