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ピックでジャカジャカと弦を弾いてチューニングを確認する。うん、いい感じ。
「ほんとは完成形をパソコンに打ち込んでるんだけど、考えるときはアコギ使いながら歌ってるの。藤牧くんみたいに上手いわけじゃないけど」
そう呟きながらちらりと彼の顔を見れば、視線がぶつかった。
どこまでも真っ直ぐな、そんな瞳。
思わず目を逸らした。
「...弾く、ね」
無言に耐えきれなくてそう言う。
うんと相槌を打つのが聞こえた。その声は、やっぱりどうしても馬鹿にするような響きはなくて。
すう、と息を吸う。
こっちに来て初めて書いた歌。
知らない土地に来てまっさらな自分が始まったような、そんな気がしたのだ。
コードを鳴らして歌を紡ぐ。どうか、私の言葉が彼に届くように。
取り敢えず歌ったのはワンコーラス、最後の声を切って震える息をついた。
彼は無言でどうにも顔を上げられない。
彼の反応が怖かった。
曲を作るのは好きだけど、自信なんかいつだってないのだ。
「滝本さん、」
びくりと肩を震わせた。あぁ、なんて言われるのだろう？
「めっっちゃくちゃ、いいね」
「え」
予想していなかった言葉に思わず顔を上げる。
瞳がきらりと光っていた。
彼が笑うところを、初めて見た。
「なんか、歌詞がめちゃくちゃ良い」
サビの歌詞好きだったとか、出だしの語感が良いとか、あとギターのどっかのコードが引っかかっててお洒落、とか。
最後に関しては付け足したみたいだったけど。
そこまで、言われるとは。
想像していた反応と全く違うそれで、呆気にとられて。とにかく一言絞り出した。
「藤牧くん、歌詞派？」
そう呟けば自分がかなり話していたことに気がついたのかあ、いや、とか言いながら視線が逸れて左手が首を掻いた。照れ隠し？
「...まあ、そう」
目線は合わないまま、でも口元は確かに少し緩んでいて。
かわいい。
......って何私、同級生の男の子に対して！！
胸の中に零れたその感情に訳もなく心拍数が速くなって。気を紛らわせようとじゃあ、と声を上げた。
「もう一回聞くね。私の曲、歌ってくれませんか」
その言葉に藤牧くんは今度こそ頷いた。
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
