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事の発端は、やっぱり一番以降の歌詞がどうにも決まらないことだった。
Cメロ以降は手付かず、ニ番は書けたけどどうにも気に入らない。
外の空気吸って気分を変えようといつもの公園に向かえば、どこからか澄んだ歌声がして。
気になってふらふらと探し歩いていたらそこに藤牧くんがいたのだ。
靄がかかったように行き詰まっていた思考が、さぁっと晴れていくのを感じた。
透き通った歌声。
まだ荒削り、でも確かに感じる歌に対する熱量。
そして偶然か必然か。彼の声がこの曲にピッタリだと、そう直感がした。
「藤牧くん！」
びくりと肩を震わせた彼は勢いよくこちらを振り向いて、目を見開いた。
「な、」
なんでここにとでも言いたげな彼の表情をよそに、私は口を開いた。
そしてさっきの発言に戻る。
私のそんな言葉に彼は困惑しきったようにはぁ？と声を上げた。
「なんでいきなりそんな、」
「この前、嘘ついたの」
彼の言葉を遮ってそう口にする。彼が困り顔のまま閉口したのを見つめて続けた。
「ギター弾くのは好きだけどそうじゃなくて、ほんとは曲作ってるの。藤牧くんの声が、今作ってる曲にぴったりだって、そう思って......」
言葉尻が萎んでいく。我に返って自分が何を口走っているのかがようやく理解に追いついたのだ。
ただのクラスメイトに何言ってるんだろ私...。
「ごめ、やっぱ忘れ」
「聞かせてよ」
て、と言い終わる前に彼はそう告げた。
えっと目を瞬かせる。
「そのつもりで言ったんじゃないの」
淡々と続いた言葉に嘲笑うような響きはなかった。私の勘違いかもしれないけど寧ろ興味有りげな、そんな風に聞こえて。
「う、うんっ」
そう頷いてケースを地面に置いてそこからアコースティックギターを取り出す。
物心ついたころからの、私の相棒。
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
