歌に愛された彼がアイドルになるまでの話 (ページ47)

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そんな話をして、ご飯を食べ終わって丁度予鈴が鳴る。さてと、と荷物をまとめて立ち上がった。
「個人的な勘としては、今日か明日ってところかな」
「すごい勘ね」
なんの根拠よと桃奈に呆れた目で見られるけど、本当に勘としか言いようがない。

「いやまあ勘なんだけど、あとはカッターまで持ち出す相手がこんなにも出てこないのが不思議で。そろそろブチギレるんじゃないかって憶測」
そう伝えれば、それは一理あるかと彼女も立ち上がった。

「Aのことだから上手くやるんでしょうけど、大怪我とかほんとやめてよ」
「どうかな〜〜〜〜〜」
人はそれをフラグと呼ぶ。

ガタンッ、と騒々しく大きな音を立てて机にぶち当たって体勢を崩す。腰を強打した。かなり、いやめっちゃ痛い。
誰が？

勿論私が。

ちょっと油断してたな、と痛みで引き攣る喉から息を漏らした。

「アンタでしょ、京介くんにベッタベタとまとわりついてた勘違いも甚だしいゴミは」
凄い言い様だな、と上から降ってくる声の元凶を見上げる。

セミロングの髪、たれ目、鼻はそんな高くなくて唇はちょっと厚め。この顔昨日見た。間違いない、佐東真穂だ。
その後ろにあと二人いるけど見覚えがないから取り巻きだろうか。実在するんだその構図。

「...ベタベタ？いつもあの距離感だけど、そんな言い方しないでよ」
へらり、と笑う。すると彼女は忌々しげに私を見下ろした。

勘で今日か明日、と言った翌日に実際こうなっているのだが。最初から彼女が出てきたわけではない。

私の狭い交友関係の中で、他クラスで面識があるという珍しい人がいたのだ。彼女とは委員会が同じで、たまたま隣の席に座ったから少し話したくらいの間柄。
大人しい雰囲気の子で、和やかに話してくれたのを覚えている。

その彼女が、顔面を真っ青にして取り巻きの後ろに立っていた。たまたま私と知り合いだったから、私をここに来させるように言われたんだろう。
私の視線を辿った目の前の女が、あぁと思い出したかのように彼女に顔を向けた。