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「ねぇ桃奈、お願いあるんだけど」
「なんでそんなヤケににっこにこなのよ...」
昼休み。
ご飯を一緒に食べようと桃奈の前の席の椅子を動かして、彼女と向かい合うように座った。
「あのさ、前桃奈が言ってたじゃん？京介のこと好きな子はいくらでもいるから気をつけなよ、って」
「えうん、言った。それがどうかしたの」
きょとんとしたような顔をしながら、彼女はコンビニのおにぎりの包装を破く。そんな彼女の前に私は一枚の切れ端を差し出して、それを受け取って眺めた彼女は眉を顰めた。
「え、何これ」
「あとそう、これもあって」
元の形から変わってしまった参考書をトン、と机上に置く。その様相に、ぎょっとしたように彼女は目を見開いた。
「えっちょっと待って、ホント何！？どうしたのこれ！？」
「ちょっと静かにして、人目忍んだ方がいいから」
「じゃあなんで教室の中で喋ってんのよ...」
「それとこれもあって」
「まだあるの！？」
声量を抑えながらも片眉を跳ねあげたその目の前に、銀色のそれを置いた。
絶句する彼女の視線の先に並んだのは。
「消えろ」と油性ペンで勢いよく書かれた紙の切れ端、中身がビリビリに破かれた参考書、血の付いたカミソリの刃。
ざわざわと教室内が喧騒に満ちている中で、そこだけが異様な空気だった。
「...か、」
「か？」
「完全に目ぇ付けられてるじゃない...」
事情を把握した桃奈は、海よりも深い溜め息を吐いた。
「てかこれ、血付いてんだけど？どんなホラーよ」
「朝学校来たら上靴に仕込まれてた」
「用意周到すぎるでしょ...てことはあんたどっか怪我してる？見せなさい今すぐ」
「そんな大したことないよ」
「これは大したことあるって言うのよ！！」
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
