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ガラララ、と立て付けの悪い戸を音を立てて開ける。クラスメイトのおはようの声に適当に返事をして、自分の席に座った。
ふと、違和感が首をもたげる。
上靴が細工されたのは今朝か昨日、でも私のことを後をつけてまで確実に機会を狙って行われたその細工が"あれだけ"なことがあるだろうか。
まさか。
勢いよく机の中に手を突っ込む。参考書とノートの、硬い感触が手に伝わるはずだった。
ガサリ。紙が擦れる音。
やられたと、ただそう思った。
周りに見られないように、音を立てずに数枚取り出す。それは、ビリビリになったノートと教科書の切れ端で。
この受験期に、これは、ちょっとキツイ。
ぐらりと自分の中の何かが傾いていく感覚。先程切った指が、じくじくと痛んでいた。
「何見てんの？」
「っ、」
後ろから声をかけられ、思わず肩を震わせる。机の上に置いていた手を胸元に引き寄せて、彼...京介になんでもない、と返す。
時間的に妥当だけれど、動揺して彼がもう教室に来ていたことに気づけなかった。
ふ、と細く息を吐いて、心臓がどくどくとやけに脈打っているのをなだめた。
彼にはどうしても隠し通さなければならない。指の傷も、びりびりに裂かれた教科書達も。
原因を知ればなんだかんだ優しい彼のことだ、自分を責めてしまうかもしれないから。
そう言い聞かせるうちに頭が冷えていくのが自分でも分かった。それと同時に、怯えや動揺に隠れていた感情がふつふつと湧いてくる。
(私が、何したって言うのよ！！)
端的に言えばキレていた。それまでのフラストレーションは、確実に溜まっていた。
別に私達は付き合ってる訳でもなし、趣味と気が妙に合って築かれた関係性に嫉妬されるのは筋違いである。
というか誰だか知らないけれどこんなことせずとも、半年前に引っ越してきた私より京介と距離を縮める時間は余程あっただろう。こんなことするよりそっちに時間を割けばいいのに。てかここまで回りくどいことなんかせず私に直接言いなさいよ！
教室に担任が入ってきた。学級委員の起立、という声が聞こえてガタンと椅子を引いて立ち上がった。礼、着席。声に従って同じことをして再び椅子に座る。
そっちがその気なら、私だって考えがある。
待ってなさいよ、根性無し！！！
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
