歌に愛された彼がアイドルになるまでの話 (ページ33)

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そんな風に彼女と話していれば、視界にクラスメイトと喋りながらグラウンドにやって来た京介が映った。パチ、と視線が噛み合って______にやりと笑った、彼の口元が動いた。

　こ、け、ん、な、よ。

「余計なお世話よ......！！！」
「え何いきなり」
　頭を抱えると呆れたような声が飛んでくる。何もうこの人たち、コケたら笑ってくる人と最早私がコケるのを待ってそうな人。最悪だ、もっと優しい友達作るべきだ今からでも作ろう。

　くだらないことをぐるぐると考えながらグラウンドに並び始める。
　ざわざわとしている周囲がテンション上がっているのを感じて、気合入ってるなと内心独りごちた。私の今日のモットーは怪我をしないである。

　全体が並び終わって、開会式が始まる。吹奏楽部のファンファーレ、選手宣誓、代表生徒の挨拶。
「...なんか仰々しくない？」
「え、そう？」
　桃奈に首を傾げられた。彼女がそう言うならそうでもないのかもしれない。

　最後に教頭先生の話で式は終わって、ラジオ体操をして全体の動きは一度終わる。最初の競技は二年生のリレーなので、一年生と三年生はグラウンドの端にはけた。

　水筒の中の冷えたお茶を飲みながら、何気なく辺りを見回した。

　結構親も来ていて、ゴザを引いたり日傘を差していたり三脚を立てていたりと、思い思いに観戦の準備をしている。
　お母さんも来るって半笑いで言っていたな。そんなに娘がコケるのが楽しみか？？お父さんは仕事の都合で午後かららしいけど。

　まぁ私は普通に体力がもたないので、自分が出る種目以外はグラウンドの端の木陰に入りながら、のんびり観戦する予定である。何なら折りたたみ椅子すらこっそり持ってきた。

　早速椅子を出して腰掛けて、種目が行われているグラウンドの中心を眺める。

　ドゥンドゥンと低音を響かせるスピーカー、それぞれの色の組への声援、マイクを通した実況する生徒の声。
　雑然とした空間は熱気を伴って、どこか高揚感をもたらしてくれる。いやまあ他の人よりかはテンション低めだけど。

「休むには早くない？」

　聞き慣れた声が上から降ってきて、そちらを見上げれば京介がタオル片手に立っていた。
「私の体力舐めてもらっちゃ困るわ」
　逆にね、と吐息だけで笑う彼だがこちらは大真面目である。