歌に愛された彼がアイドルになるまでの話 (ページ32)

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そんなこんなで体育の授業を必死にこなしながら時折放課後に、公園でバトンパスの特訓をしてもらう日々が続いた。まぁ私と京介が会ったあの公園なのだけど、丁度学区よりも外側にあるから同級生とかと鉢合せる可能性も低い。

　その甲斐もあって多少前より体力がついたような気がするし、彼いわく走る軸がブレなくなったらしい。よくわからないけど。

　そんな練習をしながら作曲もちまちまと進めていた。運動会といえば応援歌だよね、という安直なノリでエールソングっぽい感じの。

　でも流石にあまりにも捻りがないなと思ったので、歌詞をちょっと暗めに作ったところ、京介に死ぬほど泥臭いなと言われた。死ぬほど泥臭い歌詞をBPM170とかのアップテンポなギターチューンに乗せて歌うから丁度良いんだよと、彼には懇切丁寧に説明しておいた。

　そうして毎日を過ごしていれば、月日が過ぎ去るのはあっという間な訳で。

　やってきてしまいました、運動会当日が！！！

　じりじりと照りつける太陽。朝だからまだいいものの、秋なのにこんなに暑くて意味がわからない。
「何浮かない顔してんの！」
　バシ、と背中を叩かれ思わず呻く。ももなぁ、と恨めしい声が出た。

「せっかくの体育祭楽しまなきゃ損でしょ、ほらちゃきっとハチマキ巻いて！」
　パシ、と今度は青色のハチマキを巻いていた手首を軽くはたかれた。
「とは言いますけど......ずっこけないように祈っててよ本当に！！」

　するとケラケラと笑い出す彼女。
　桃奈は私がずっこけるのを既に二回見ている。一回目は一学期の授業の時、二回目は一週間前くらいに何か廊下を走るときがあって、何もないし本気も出してないのにこけたし摩擦で膝を擦った。要するにめちゃくちゃ前科ありだった。

「ま、まぁ...んふ、もしコケたら盛大に笑ってあげるから」
　笑いが堪えきれていない。最悪である。

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BPMとは
要するにテンポ、曲の速さのこと。数字が多ければ速いし少なければ遅い。秒針がカチカチ進む速さはBPM60。