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教室がざわついた気がして首をすくめそうになるのを我慢して、教壇の横に立つ。
周りが見えない、というか見たくない。どんな顔してるんだろう。
「さ、自己紹介して」
先生に声を掛けられて、仕方ないと腹をくくった。顔を上げる。
「滝本、Aです。父の転勤で長野に引っ越してきました。分からないことだらけなので、色々教えてくれると嬉しいです」
話しながら、にこにこしている女の子とか物珍しそうにこっちを見る男の子が目に入った。
ぺこりとお辞儀をすると、ぱちぱちと拍手が起きたことに安心する。少なくとも多少は歓迎されているみたいだった。
「じゃあちょっとだけ質問タイム取るけど、何か滝本さんに聞きたいことあるか？」
えっと、小さく声が漏れた。何それ聞いてない！
どっと嫌な汗が流れる。
そんな私を他所に皆全然手挙げてるし。え、そんなに聞きたいことある？
三人な、との先生の声とともに最初に当てられた活発そうな男の子。
「好きな食べ物なんですか！」
「え、ええと、スイーツとか...甘いものが好きです」
「はい！どこから越してきたんですか？」
次はポニーテールの女の子。東京です、と言えばちょっとどよめいた。そこそんな反応する？
矢継ぎ早に来る質問にしどろもどろになりながら乗り切って、あと一つだと思った瞬間。
「趣味はなんですか？」
興味津々な顔でそう聞いたボブの女の子。
どっと心臓が跳ねた。
分かってる、きっと何も他意はない。
「...お、音楽聞くのとか。ポップス」
おぉとあちこちでそんな声が聞えて、はい終了と隣の先生が声を上げた。
普通に答えれた、と肩の力を抜く。
「じゃあ滝本さんは一番後ろに開いてる席あるから、そこに座って」
それに僅かに頷いて、机の間を通り抜けて廊下側から三番目の列の後ろの椅子を引いた。
ほんとにひやりとした、とまだどくどくいっている心臓を宥める。
「滝本さん、よろしくね」
にこやかに声を掛けてくれた右隣の女の子にこちらこそと笑顔を返した。
反対はどうだろうと、ちらりと隣の席の男の子の様子を見ると、なんかガッツリ頬杖をついたまま寝ていた。
え、寝てる？まだ授業始まってもないのに...？
困惑しながら私の新しい学校生活が始まった。
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
