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「え、いや、まぁカラオケ行ったりはこれからもしたいし歌も歌ってほしいけど。普通に考えてその学校での付き合いもあるし」
あぁ、と彼は納得したように視線をついと下げた。
「なんかそう言われると実感湧かないな」
「確かに」
今は夏休みだけど、学校じゃ毎日同じクラスだし。放課後は藤牧くん部活あるけど、なんか定期的にこのトヨさんたちの家に泊まりに来てるからって度々私もこの部屋に来てる、し。休日もわりと月一くらいでカラオケ、行ってる、し...。
「もしかして私達って結構一緒にいる？」
「今？」
呆れたような視線を向けられるがこっちもびっくりである。思い返してみれば実はこっちに越してきて一番一緒にいるの藤牧くんじゃない！？
「や、なんか一緒にいることに違和感がなさすぎるんだよね」
「確かに」
デジャヴである。
私ってそんなに距離感バグってたっけ、とか首を傾げているとじゃあさと彼が声を上げた。
「...名前の呼び方変えない？」
「え」
思いもよらない言葉に動きを止めると、彼は慌てたようにや、その、とか視線を彷徨わせる。
「お互いの家、てかおばあちゃんちだけど。行き来すんのに名字呼びって逆に距離おかしくない？」
「まぁそうかもしれないけど」
でも今更変えるのもなんだか、気恥ずかしい気もする...という、か！！
「そう言えば、前私のこと下の名前で呼んだよね？倒れるの引っ張ってくれたとき」
え、と今度は逆に彼が固まる番だった。
「ほら、公園で曲聞いてもらった次の日の朝だっけ？フラフラ私が歩いてたらさ」
「覚えてる、けど」
視線がぶつからない、ちょっと耳も赤い気がする。狼狽えている彼を見るのは新鮮で、からかいたくなってきた。
「あのとき実はちょっと嬉しかったよ、藤牧くんが！私のこと！！下の名前で呼んだ！！！って」
「ちょ、わか、分かったから」
やばいにやにやが止まらない。すると彼とばちりと目が、合って。やばいからかってるのばれた。
すっと彼の目が据わって、
私は墓穴を掘ったと思った。
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
