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つまりカラオケから出て歩いているところを桃奈に見られたらしい。
「まぁ、私は二人が付き合ってようがなんだろうが」
「いや付き合ってない」
「あっそう？なんでもいいけどさ、京介モテるから下手に一緒に歩いてるの見られたら刺されるよって言いたかったの」
「刺されるって」
「言葉の綾よ、でも厄介な奴は割といるから」
要するに心配してくれていたらしい。
何を話すべきか、曲を作ってるのはあんまり言いたくないし、藤牧くんがカラオケヘビーユーザーなのも言っていいんだろうか。
「なんか...藤牧くんのおばあさんのお家が偶々私の家の隣だったんだよね、それで顔合わせるようになったんだけど」
昨日は偶然会っただけ。
苦し紛れの言い訳だけど、平然を装って言う。嘘をつく時には本当のことを混ぜるといいって偉い人が言ってた。
「ふーーーん？」
「ねぇ信じてないでしょ、まじで付き合ってるとかないから！！」
そこで担任が来て、教室の中入ってと催促されたので話は途切れた。
「んーーま、あの辺うちの学区じゃないから誰かと会う率低いっちゃ低いけど。上手くやんなよ」
肩を軽く叩かれて、あーと曖昧に返事をした。気をつけるって言ったってどうもできないけど。
そのまま教室に入って、着席する頃合いにSHRが始まった。
彼女は仲のいいクラスメイトの中でも気さくで、一番気軽に話せるのも桃奈だ。小学校から藤牧くんとも顔馴染で、よく適当に絡んでケラケラ笑っているところも見掛ける。
だから、多分本当なんだろう。
彼がモテるのも、下手を打てば彼に恋する女の子とその取り巻きに『京介くんに近づかないでくれる？』とかいうリンチをされるのも。いや、後者は完全に想像だけど。
______そんな仲良かったっけ、どういう関係？
友達、と括ってしまうのは簡単である。
最初は隣の席の男の子、次はお隣さんが彼のおばあさんたち......
私の曲を歌う人と、歌ってもらう人。
この数日間で距離が近くなったと思う。友達でいいのかもしれない。
けれどなんか、今まで親以外に明かしてこなかった秘密を共有する相手にしては、その言葉を少しだけアンバランスに思っていて。あぁ、桃奈の言う厄介な人って私も含まれるのかもしれない。
その関係に名前をつけるとすれば、
かっこつけすぎかもしれないけど。
共犯者、だなんて。
私の中では呼んでも、いいだろうか。
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作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
