・ ページ18
すると彼は今度はぱっと此方に振り向いて、思わず肩をびくりと震わせる。
「はじめまして、ここのバイトやってる佐藤です。どうぞご贔屓に！」
「た、滝本です...」
ニコッと朗らかな笑みだけど、勢いがすごい。少々押されながら会釈して名前を口にした。
「京ちゃんの同級生？学割しとくからね、一応学生証見せてもらえるかな」
そう言われたので生徒手帳に挟んであるそれを見せると、ちらりとそれを見てレジをいじっていた。もう良いらしい、バックに生徒手帳ごとしまう。
「ソフトドリンク付けてひとり六百五十円ね〜」
やっすと思わず声が出た。東京にいた時とか、今まで行ったことあるチェーン店よりも断然安い。
「そうでしょ！」
得意げにする佐藤さん。すると財布を取り出しながら藤牧くんが口を開く。
「ここのオーナー、てかビル持ってるのが宮下さんって言うんだけど、もう他のテナントで儲かってるから赤字でも全然良いって理由でこの値段らしいんだよね」
彼いわく学生に優しいカラオケ店たれ、がモットーらしい。へぇ、と合槌を打って私もお金をカウンターに置いた。
「毎度あり。じゃあ好きな部屋使って、ニ時間だから大体六時半を目処に出てきてね！まぁ大して客いないから多少長引いてもいいけど」
いや、緩すぎないか？
「てか、佐藤さんってどういう人なの？行きつけの店の店員にしてはあの、大分、距離感近めだったけど」
カラオケの個室に入って荷物を起きながらそう彼に聞く。
「え、あぁ...元々兄貴の知り合い。俺のことも昔から知ってるから、めちゃくちゃ馴れ馴れしいんだよね」
「そ、そうなんだ」
人がわざわざ言葉を濁したのに全然ド直球に言うじゃん。
「それで、音域確認だっけ。選びながらだけど適当に好きな曲入れてもいい？」
「あ、全然それで良いよ」
おっけ、と頷いた彼は飲み物取ってくると言ってドアに手をかける。
「なんか飲みたいのある？」
「ん〜ジンジャーエール的なの...」
分かったと、今度こそ彼は部屋を出ていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てくの | 作成日時：2022年10月11日 18時
