真昼とクロ.4 ページ5
「「はぁ?」」
もったいぶって出してきたのがそんなお伽噺のようなワードで、虎雪と龍征は呆れ声を出す。俺は声こそ出さなかったが顔を歪めていた。
「いやマジで!! 通り魔みたいなんだけど」
明らかに信じられていないのが分かったのか桜哉が慌てて説明しだす。
「その被害者は首腕に噛まれた痕があって……全身の血が抜かれてたんだって! 被害者はすでに数十人とか……」
桜哉の話していることが吸血鬼なんていう突飛なものから現実味を帯びたものに変わると場の雰囲気も変化していった。このなかでも特に気弱な虎雪は「こわっ」と小さく呟き怯え出す。
そして、桜哉の口からお決まりのあの言葉が――
「さてっ、今の話はど――」
――出てくる前に俺が桜哉の頭にベシッとチョップを喰らわした。
「言うと思った。虎雪をビビらすでない」
「いってぇ〜。真昼さん、せめてもう少し言わせてください……」
「なんだ嘘か〜」
「桜哉の噂話は大抵嘘だろ……」
俺たちのやり取りを見て先程までの話を冗談だと感じとったのか、不安そうにしていた虎雪は安堵の息を漏らす。うん、可愛い。
そんな信じきっていた彼にも呆れるように龍征は言った。
「あ、駅前のカラオケ行かない? 割引券あるんだ〜」
「おっ、いいな!」
「うわああ、すげー無視! 駅ダメ!!」
歌うことはそれなりに好きなので虎雪の提案に賛同すると、桜哉は焦って止めようとする。
「俺洗濯物取り込んでから行くから……桜哉も絶対来いよ! 拒否権はねーぞ!!」
いつものメンバーで行きたかったので人差し指でビシッと桜哉を差しながら言う。桜哉は「うげぇ」と顔をしかめる。そんな顔する必要ねーだろ。
「ひどっ! つーか襲われても知らねーからっ」
「だいじょーぶだっつーの!」
後ろから叫ぶ桜哉に、負けないくらい大きな声でそう返しながら俺は家路を辿った。
実際、吸血鬼に襲われても、俺は強いから勝てるんだよなぁ。
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