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真昼とクロ.13 ページ14

「全部だよ死ねボケェ!! 無視してっと殺すぞ!!」

 とうとう吸血鬼が本性を表した。首から大量に出血している龍征がバタンと倒れた。
 叫び声をあげて虎雪は「龍ちゃんっ……」と言いながら膝から崩れ落ちる。俺も慌てて龍征の側に走り寄った。「龍征、龍征」と名前を何度も呼ぶが小さく荒い呼吸を繰り返すだけで返事がない。相手の顔が、どんどん青ざめてきているような気もした。

(このままじゃ龍征は――)

 そんな最悪な想像をした途端、あの手品師に対する怒りなんて生温いものでは形容できないような何かが俺のなかに沸き上がってくる。当の本人はそれに気づいてないのだろう、笑い声をあげながら曲芸師のようにグワングワンと街灯にぶら下がっていた。

「あははははははァッ、どォもどォも喝采をどォも!! やっぱり手品よりこっちのほうが盛り上がるなァ〜〜〜。手品師より吸血鬼(・・・)のほうがレアだもんね〜〜〜〜?」
「やっぱりそうだったのかよ……」

 ボソリと吐き捨てるように呟く。しかし冷静な言葉とは裏腹に心は燃え上がっていた。ダメだ、押さえなければ。今するべきことは龍征の応急処置。止血をして救急車を呼ぶこと。こんな狂人に構ってる猶予はない。

「そォ〜〜〜〜。キミも昨日拾った(・・・)でしょォ? キミが拾ったのはドレ(・・)かなァ?」

 なのに俺の感情のブレーキは効かなかった。吸血鬼の話を遮るように俺は相手に殴りかかっていたのだ。

 自分でもどうかしていたと思う。本当に、冷静さに欠けていた。この攻撃の仕方じゃ百パー押さえ込まれることなんていつもの俺だったら分かってたはずなんだ。
 持ち前の運動神経で俺は飛び上がり、手品師の顔面に右ストレートをお見舞いしようとした。ここでもうダメだ。無鉄砲にもほどがある。
 手品師は殴りかかってくる俺をチラリと見ると避けてきた。俺の攻撃は空振り。ここまでならまだしも相手は俺の首に剣の柄の部分で突いてきたのだ。「ぐえっ」と気持ち悪い声が漏れる。喉を貫かれなかっただけマシだと思うがそれでも突かれると同時に頭に踵落としをくらい地面に顔面ダイブはきつかった。何よりくそ痛ぇしくそダセェ。

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作者名:信条誠 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年5月4日 7時

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