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いつもと同じ朝、または斜陽のある会話 ページ6

「おはようございます、先輩!!」


 次の朝も、私はいつもの電車で先輩に挨拶をした。


「おはよ、A」

 最近先輩は私のことを名前で呼んでくれる。


「あ、昨日かいんから先輩のこといろいろ聞きましたよ!女の子にモテるんですってね〜!!!」

 からかい混じりに隣に座った先輩に言ってみる。

「かいん、って…飯塚?」

「そうですそうですー!!飯塚快ですよ」


 私は大きくうなずくと、ふだん仲良くしていることを説明した。


「ふーん…っていうか、飯塚となんつー話してんのw」

「いやいや、気になってw」

 私がニヤッと笑って見せると、先輩は困ったように笑って「何、俺に興味あるの?」なんて聞いてくる。



「ありませんよ!冗談きついです!!」

 引く真似をしながら私は笑った。




 だけど内心、ちょっとだけドキッとした。


 先輩はひどいな、なんて笑ってスマホの画面に目を落とす。

私も膝の上の本を開いた。


“ 恋、と書いたら、あと、書けなくなった。”


「太宰?」

「あっ、はい。私、これが一番好きなんです」

「太宰は女性の視線の描写がうますぎる、って言われてるくらいだからね。斜陽とか女生徒とか、俺も好き」


 先輩はふふっと笑って横から覗き込んだ。



「……私、お母さまみたいな人、素敵だなって思うんですけど…でも仲良くはなれないでしょうね」


そう言って肩をすくめると、先輩もくすくす笑って頷いた。

「そりゃAには無理だよ」

「失礼ですね!!」

「だってAはこういう人じゃなくて、もっと活動的だもん。お母さまも面喰っちゃうよ」

「あーーー!そういうこと言うんだーーーー!!!」

「ほら電車だよ、静かに」


 私はそんなふうにイジワルに笑う先輩の笑顔をしっかりと目に焼き付けると、先輩と電車を降りた。

その少女、恋する乙女につき→←無自覚の自覚と意識の始まり



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Shuu nakamori(プロフ) - 面白かったです!今日見つけたばっかりなのにmacoさんの作品好きになりました!またそらるさんの小説読みたいです!出来ればR18で...! (2018年5月12日 21時) (レス) id: ff2902b544 (このIDを非表示/違反報告)
Maco(プロフ) - コメントありがとうございます!長らく更新できなくてすみませんでした!! (2016年1月2日 16時) (レス) id: 8f4193691d (このIDを非表示/違反報告)
lolo(プロフ) - お願いします続きがものすごく読みたいです。もう、そらるさん本当に大好きです!! (2015年11月19日 19時) (レス) id: 6d20e51ccc (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 新作読ませてもらいました!そらるさん最高です!!!!(>ω<)白髪バーコードの小説から読ませていただきました!更新頑張ってください!楽しみにしてますね♪ (2015年10月3日 16時) (レス) id: 9de4b97fda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Maco | 作成日時:2015年10月2日 18時

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