道の向こうの。 ページ21
「先輩の馬鹿っ!!」
私はそう叫ぶと走って部屋を飛び出した。
話はちょうど一日前に遡る。
*****
私はその日、松下ちゃんと買い物に行った。
松下ちゃんが一緒に服を買いに行こう、と誘ってくれたのだ。
私は松下ちゃんと駅前で待ち合わせて、商店街の方へ出た。
一緒に歩く道すがら、松下ちゃんは楽しそうにかいんとの進捗を聞かせてくれた。
「昨日は飯塚から話しかけてくれたんだよ!まぁ、消しゴム忘れたから貸して、って話だったけど…」
「良かったじゃん!物を借りに来るってことは、信頼してくれてるってことだよ」
私は松下ちゃんの背中をぱんっ、と叩いた。
「そうかな……」
「そうだよ!」
「…そういうことに…しようか……!!!ありがと!!」
ちょっと元気が出たみたいだ。
松下ちゃんは嬉しそうに頷いた。
その矢先。
「あ………っ…」
松下ちゃんが道の向こうを見て声を漏らした。
「何?」
「な、なんでも……あっ!!」
私が道の向こうに目を向けると、松下ちゃんは小さな声で駄目…と呟いた。
「……せん、ぱい…」
松下ちゃんは私に見せたくなかったのだろう。
私も、見たくなかった。見なければよかった。
先輩が歩いていた。
だけど、一人じゃなくて…………。
「…ろん、先輩……」
少し前に、クラスの女子たちは先輩に告白して振られた、と噂していた。
だけど道の向こうを歩く先輩は確かにろん先輩と一緒で…楽しそうに笑ってて………。
「…A………」
「…行こう」
私は、無理やり目をそらした。
「で、でも…」
「行こう。ほら、服、見よう!」
私は笑って歩き続けた。
見たくない。
ねえ先輩、大丈夫だよね。きっと、何か事情があるんだよね。
私、先輩のこと、信じてるもん。気にしてないよ。
その後、私は忘れようと思って松下ちゃんと色々なお店を回って服を選んだ。
だけど、どうしても気になってしまって、松下ちゃんに気を遣わせてしまった。
「…今日はもう、帰ろう?」
「松下ちゃん…」
「…ね?」
松下ちゃんは私の両手をしっかり握ると、笑って私の顔を覗き込んだ。
私はうん、と頷いたけど、たぶん…酷い顔だったと思う。
私は松下ちゃんと買った服の袋を握りしめ、私は精一杯笑ってみた。
だけど松下ちゃんにはちゃんとわかったみたいで、何も言わずに私を抱き締めてくれた。
………苦しい。
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Shuu nakamori(プロフ) - 面白かったです!今日見つけたばっかりなのにmacoさんの作品好きになりました!またそらるさんの小説読みたいです!出来ればR18で...! (2018年5月12日 21時) (レス) id: ff2902b544 (このIDを非表示/違反報告)
Maco(プロフ) - コメントありがとうございます!長らく更新できなくてすみませんでした!! (2016年1月2日 16時) (レス) id: 8f4193691d (このIDを非表示/違反報告)
lolo(プロフ) - お願いします続きがものすごく読みたいです。もう、そらるさん本当に大好きです!! (2015年11月19日 19時) (レス) id: 6d20e51ccc (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 新作読ませてもらいました!そらるさん最高です!!!!(>ω<)白髪バーコードの小説から読ませていただきました!更新頑張ってください!楽しみにしてますね♪ (2015年10月3日 16時) (レス) id: 9de4b97fda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Maco | 作成日時:2015年10月2日 18時